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あの頃、同人作品で褒められても「原作者がすごい」としか思えなかった

先週の土曜、子供のころ住んでいた
祖父母宅へ行った。
ずっと置きっ放しの荷物があり、
必要なものがないか確認してほしい、
と言われたからだ。

「全部捨てていいものばっかりでしょ」
と思っていたが、大量の投稿漫画と
同人誌原稿などを見つけた。

わたしはその昔、同人少女だった。

* * *

確か14歳ごろから覚醒して、
いわゆる二次創作同人活動は
30歳くらいまでやっていた。
本当に熱心に活動していたのは
19歳くらいまでで、
それ以降は付かず離れずだったり
数年のブランクがあったり、
描いてもネット上に上げるだけで
同人誌などは出していなかったが。

わたしは同人活動をしている間、
ずっと違和感を抱えていた。
それは、どんなに自分の作品を
褒められていても、
「それは原作者がすごいからだ」
としか思えなかったことだ。

* * *

今年になってから、ものすごく久しぶりに
創作漫画を真面目に描き出した。
だからわかるのだけど、創作漫画は
「キャラクターの魅力を
自分で引き出さないといけない」。

当たり前のことだけど、
二次創作同人ではそれがなかったのだ。
だってそこには原作があって、
キャラクターの魅力はもうすでに
原作者が引き出してくれているから。

たとえどんなに自己設定で
パラレル作品を描いたとしても、
「その人物」がそもそも愛されていて、
どんな性格なのかみんなわかっているから、
わたしの作品で喜んでくれる。

事実はどうあれ、
自分にはそうとしか
思えなかった。

* * *

わたしも人の二次創作を
見ることがあるので、

「この人の描く〇〇、
めっちゃいいな!!!!」

という気持ちはすごくわかる。

実際、自分が二次創作を
している時も、
「巴さんが描く〇〇だから
いいんですよ!」
と言われたことがある。

でもだめだった。
人の好意も褒めもほとんど全然
受け取れなかった。
申し訳ない。
申し訳ないけど、そうだった。

* * *

今思えば、周りの人たちはみんな
キャラクターを心底愛していたんだな、
と思う。

わたしももちろん好きだったが、
みんなほどのめり込めていないことを
本当はうすうす気づいていた。

わたしは「自分の作品」を、
「自分の伝えたいこと」を、
人のまわしで相撲を取って
見て欲しかっただけだ。

* * *

二次創作や同人活動を
否定している訳じゃない。
「自分には合わなかった」
という話をしている。

わたしも好きだったし
本気で原稿を描いていた。
でもわたしには
「合わなかった」。

だから未だに、
心底楽しそうに、
心底キャラクターを愛して
二次創作をしている人たちが
うらやましい。

多分、わたしは
「それをできる側の人」
じゃなかったのだろう。

「みんな」と同じになりたかった。
「みんな」と盛り上がって、
みんなと同じ愛を持っているように
錯覚したかった。

ずっと、そうなればきっと
苦しみがなくなって
幸せになれるのだろうと
信じていた。

* * *

時々らくがきで
ファンアートを描くものの、
わたしはもう二次創作の
同人活動はしていない。
これからもしないだろう、たぶん。

でも人生は何が起きるか
わからないから、
ある日突然わたしを
沼へ落とす作品に
出会ったりするのかもしれない。

* * *

一次創作のイラストや漫画は、
二次創作をやっていた頃より
ぜんぜん見てもらえない。

でも、「好きです」と言われたら
まっすぐ受け止められるようになった。

「原作者がすごいので、
わたしがすごいんじゃないんですよ」
とは思わなくなった。
だってわたしが原作者だから。

※トップのイラストは、先日
Twitterに晒した21年前の
同人ペーパー(一部)です。


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伊藤巴(ともえ)@漫画家×カウンセラー
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