【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】咲いた花の愛し方
あれは、いつのことだったっけな。
少なくとも、まだ神父様が「堕ちてなかった」頃の話だ。
そんでもって、寒かったのも覚えてるから、季節は冬だったと思う。
オレらがこんな関係になるなんて、夢ですら考えたこともなかった時期。……まだ、想いを隠せていた頃の話。
***
冬は寒いし、動くのも嫌になる。
でも動かなきゃ凍っちまうもんで、仕方なく拠点を出た。
特にすることもねぇし、神父様に会いてぇしで、教会に向かう。ちょっと前に大きな集会があったらしいけど、たくさんの人がいる時は行きにくいし、こういう「何でもない日」が一番都合がいい。
神父様といると忘れそうになるけど……オレ、盗賊だしな。
……「元」って言えるほど癖が治ったわけじゃねぇしよ。
「あっ、ヴィルさん! お久しぶりです~!」
「うっす」
教会に着くと、掃除をしていた若いシスターに声をかけられる。
この子はオレみたいなのでも邪険にしねぇし、明るくて良い子だ。
「男前になったじゃないですか~」
「……マジ?」
「大マジです! 普通に好みかも」
「それ、また怒られねぇ? 大丈夫?」
「もちろん聞かれたら怒られますよ! 絶対に秘密でお願いします!」
……でも、「男前になった」って言われると照れんな。神父様も、そう思ってくれてんのかなぁ。
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