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2023年に観た映画ベスト10 + ワースト5

自己満ながらももう5, 6年続けているこの年間個人ベスト。今年はなぜかこのタイミングでスタローンにハマりロッキーシリーズで涙ぐんだり、今更リンチの面白さに気づいたりとなかなか発見の多い一年だった。

ここではその辺の以前の名作はさておき、比較的最近の映画(できる限り今年公開作)のなかから好きだった、嫌いだった作品を上げていきたいと思う。レビューはここ用にちょこちょこ削ってるので、よければリンクからフルでどうぞ。

毎年言ってるけど完全に個人の好みなので、好きな映画が貶されていても、嫌いな映画が誉められていても気にすることはないんですよ。


WORST 5:

怪物 (Monster)

はっきりした答えがないのはいつもの是枝映画と同じだけど、ミステリー展開のネタとしてこのテーマを単純に非劇的に描き、消費してしまうのは納得できない。というか、曲がりなりにも世界的な監督がこんなひと昔前の価値観でいることにけっこうがっかりさせられてしまった。尊敬する監督だったので余計に残念。

WORST 4:

ヘル・ディセント (The Lair)

ちゃんと狙って面白いB級撮ってたあのニール・マーシャルが年老いて20歳下のモデル嫁さんを引き連れてクソつまらない自身の二番煎じクリーチャー映画を届けてきたぞ!身震いするくらいサムいキャラクターと味もなにもないただただクソ雑なストーリーに震えろ!クソが!

WORST 3:

WOLF ウルフ (Wolf)

自分を動物だと認識する若者たちの収容される矯正施設が舞台の話なんだけど、これは色々浅くてクソだった。性自認やジェンダーの価値観が多様になっている今においていくらでも掘り下げられるトピックを選んで起きながら、ティーンの恋愛要素入れたりクソ浅い描き方しかしない中途半端さに本当にムカついた。

WORST 2:

ザ・スーベニア 魅せられて(The Souvenir)

監督の半自伝的作品だかなんだか知らないが、クソ退屈なインテリどものグダグダしたどうでもいいモラトリアムや恋愛模様をダラダラダラダラと垂れ流されて観るのが辛くてしんどかった。勝手にやってろボケカスが。

WORST 1:

シン・ウルトラマン(Shin Ultraman)

日本のおっさんが作りました!という感じ全開でかなりキツかった。そして2023年にもなってまだこんなうすら寒いセクハラ演出みたいなのやるの?と恥ずかしくて悲しくなった。気持ち悪すぎる。
監督ではないとはいえ庵野秀明のシン・ゴジラが震災後の邦画として最高傑作だと思っている自分にとってはこの落差はかなり心を打ち砕かれた。



BEST 10:

Infinity Pool *日本未公開

とあるリゾート地にやってきたうだつの上がらないヒモ作家がひょんなことから現地人を事故で殺めてしまうが、観光ビジネスを生業とするこの国では金を払えば自分のクローンに代わりに受刑(基本死刑)させることができ、それを知る他の観光客たちと現地で無秩序な暴力と快楽に溺れていく、という話。
これまでの監督の作品と比べてもかなりバイオレンスで、リゾート地で現地労働者を搾取する観光ビジネスを皮肉るにしても笑っちゃうくらいの血と暴力。
Tim Heckerの音楽が相性良すぎてめちゃくちゃ体調悪くなる。そしてここでも絶好調のミア・ゴスのイカれ具合にほっこり。

BEST 9:

君たちはどう生きるか(The Boy and the Heron)

常に子供に多大なる期待と可能性を抱いてきた巨匠からの、はっきりとこの世界を託す意思を示した最後のメッセージだと思うとなかなか。
話自体に引力は全然ないのに、寓話らしさや世界観の完成度、確固たるオリジナリティ(逆にいうと宮崎駿作品としては既視感満載ではあるけど)があまりに高くて圧倒させられる。

BEST 8:

オオカミの家(La casa lobo/The Wolf House)

啓発的な内容と鮮烈なビジュアル、ヒプノティックなナレーションが絡み合って幻覚にかかったような感覚に陥る。ストップモーションアニメーションをここまで文字通り立体的に描いた作品はあまりないんじゃないだろうか。作品制作の場さえも作品に取り込んでしまうその発想だけですでに脱帽。

BEST 7:

死霊のはらわた ライジング(Evil Dead Rise)

これまで続編、リメイクなど色々出てきたこのシリーズだけど、アルバレス版リメイクといいつまらないもの一本もない奇跡。
シリーズで初めて(厳密には3の中世があるけど)舞台をマンションに移した本作だが、しっかり骨組みは継承しつつ、現代的な構成の家族を登場人物として展開していく本作。安易な家族万歳映画にはならずちゃんとストイックにスプラッタを描くその姿勢に拍手。
2023年度ぶっちぎり優勝のタイトルの出方も最高。

BEST 6:

ボーはおそれている(Beau Is Afraid)

極度の神経症と強迫観念に苛まれる主人公が、社会的成功者で親子関係においても絶対的な権力を持つ母親の元へ向かう地獄の旅路を描く”コメディ”映画。
ヘレディタリーみたいにエンタメしてないしミッドサマーみたいに優しくもないのでかなり精神にクる凶悪な悲喜劇。
アリ・アスターの初期短編が元になってるらしくてそれは見た事ないんだけど、他の短編たちと似た悪意に満ちたユーモアと居心地の悪さのオンパレードで、さながら短編集のように様々な地獄を巡る3時間。日本ではこれから公開らしいのでぜひ劇場で最悪な気分になってください。

BEST 5:

ニモーナ(Nimona)

アニメってここまで自由で開放的でスマートになってたのか。
最新の人種的公平さ、ジェンダーの価値観を体現しながらも、騎士としての異質さゆえに変化を恐れる保守的な思想によって社会から迫害される主人公や、決まった形を持たない(言うまでもなく主にクィアのメタファー)ニモーナの社会からの拒絶のされ方は現実世界の差別や当人たちの苦難とリンクしていて、それをただ悲劇として描くのではなく、ネタとして利用するでもなく、しっかりと理想を掲げて物語を描くその姿勢に胸が熱くなった。是枝の怪物のある意味対岸にある作品。

BEST 4:

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(Spider-Man: Across the Spider-Verse)

表現方法としてのアニメーションが完全に芸術の域に達してて驚いた。
実写でも元々スパイダーマンのアクションは映像映えがかなりいいんだけど、今作では文字通り縦横無尽に画面を飛び回るアクションの見栄えが良すぎてチートレベル。改めてこんなアクションが映えるヒーローなかなかいないよなと思わされた。

一点、マルチバースものということでソニーからのアーカイブが色々使われてるのに対して、デカデカと共同制作感だしといて一切なにも提供しないマーベル(ディズニー)のガメつさには改めて呆れさせられた。

BEST 3:

Samsara *日本未公開

自分たちの生きているこの地球の異世界さ、美しさ、グロテスクさをミクロからマクロまで、スケールも被写体もロケーションも縦横無尽に駆け回る地球巡礼の超絶トリップ映画。
これは2011年の作品で、そもそも本ランキングはなるべく今年公開もしくは近年の作品を優先して選んでるんだけど、あまりの衝撃に思わずランクイン。

BEST 2:

この世界の(さらにいくつもの)片隅に(In This Corner (and Other Corners) of the World)

昨今はディレクターズカット(公開時にカットされたシーン、撮られなかったシーンを取り入れ、より監督の意図に近い形で作られた別バージョン)がリリースされる流れが前よりあって、それを見たとこで大した発見もない自己満みたいなものが多い(と思ってる)なか、今作はディレクターズカットとしてある意味完璧な作品だった。
元々秀逸な"戦争映画"だった今作の世界像、登場人物のキャラクターを深く深く掘り下げていて、すでに異常なレベルだった作品のディテールがさらに細かくなり、もはやドキュメンタリーレベルで彼らの、当時の生活が窺える。
登場人物の描かれ具合においては、おそらく本作のメインである主人公すずさんの、オリジナルでの人物像とは全く印象が変わってしまうような深掘り具合にあいた口が塞がらず、むしろよくこれ描かずに彼女のキャラクターを欠落させずに成立させられたなと、逆にオリジナルの評価もさらに上がるというが、その編集の腕に感心させられてしまった。
登場人物に本当に血が通っているのが感じ取れるような、ものすごい密度の作品だった。

BEST 1:

バービー(Barbie)

ホワイト・フェミニズムや資本主義的であることなど色々批判があるのは分かるが、それを踏まえても本当に良かった。
社会的、キャリア的な視点にフォーカスされがちな女性の進出、独立("妻"や"母"以外のアイデンティティの確立)だけでなく、ひとりの人間として女性がどう生きられるのかを、めちゃくちゃスマートな笑いと絶妙なシリアスさのバランスで訴えかけてくる最高な映画だった。
かといって単なる女性讃歌のフェミニズム映画には収まらず、男性に対してもかなり鋭く温かいメッセージが込められてる。むしろ男性こそ観るべき映画。

バービーというプロダクトのマーケ映画になっていると言う批判はあるけど、逆に言うとおもちゃのマーケ映画にここまで現代社会の理想を掲げて、ある意味その立場を利用する形で全世代に訴求し、今年一番のヒット作にさせたと考えると最高じゃないですか?



と言う訳で、自分でも並べてみてびっくりしたけど今年はアニメ映画が大豊作だった。
映画ではないのでここからは覗いたけど、個人的なオールタイムベスト映画のひとつであるスコット・ピルグリムの新作アニメシリーズがリリースされてそれもめっちゃくちゃに素晴らしかったり、とにかくアニメに驚かされ続けた一年だった。

これは実は水面化でアニメという表現手法が進化を遂げていたのに普段アニメを見ない自分が気づかなかっただけなのか、それとも世界がオープンに、平等になろうとする中で生まれている様々な歪みに対して、実写よりアニメの方が理想を掲げやすい(描きやすい)ということなのか。
どっちもかもしれないけど、今後はアニメももう少し積極的に見てみようかなと思わされた。

その他ここで紹介できなかった映画たちはここでちょこちょこ適当なレビューを書いているのでよければチェックしてください。


今年も読んでもらってありがとうございました。

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