【祀画】鈴木ひょっとこ
画家 / 東京都在住
今回この「祀る」というテーマを聞いて、私は数年前九州の冬の山中で焚き火に当たりながら観てきた神楽のことがすぐに頭に浮かびました。
簡単に言うと、冬になって衰えた土地を、その土地の神様に楽しんでもらって再び春の芽生え、秋の収穫を願う儀式なのですが、その中ではよく、神話の天の岩戸開きの場面を表した舞が舞われます。
大きなエネルギーの塊に対峙しているようで、観ている人間の方もとてもパワーをもらうお祭りであり、寒夜に半ば震えながら夜通し見ていると、時にはうどんや蕎麦が振舞われ、心身が温まったものでした。
こういった経験から、コロナ禍で弱ったりギスギスしがちな人の心を、神楽を直に観に行く事はできなくても、楽しく元気にできるようなシンボルとしての「祀画」として、今回の新作を描きました。
【出展作品】
『手力男うどん』
岩戸に隠れた天照大神が隙間から姿をのぞかせた時、岩戸を引き開けて岩戸の外へ引き開けたと言うタヂカラオと餅が入った「力うどん」の言葉遊びから発想しました。
餅の粘りや、熱で汁物の蓋が開けにくくなることがありますが、それを硬く閉じた岩戸の様子に見立て、力一杯開けた瞬間を描いています。
神様に食べ物を捧げるくらいですから、岩戸の中で天照大神は隠れて食事をしていたかもしれません。でも、女神なので食べている姿はあまり見られたくなかったかもしれません・・・。
『おかめ蕎麦』
岩戸の中に隠れた天照大神を外に呼び戻す為に、集まった八百万の神々を大笑いさせるような舞を舞ったとされるアメノウズメはおかめの起源であるとされています。
この顔を具材で象った昔ながらの温蕎麦の「おかめそば」を、おかめとよく一対で登場する、火吹きが由来とされる「ひょっとこ」がふーふーと吹いて冷ましてあげるのを、おかめが楽しそうに見ている場面として描いています。
『一人暮らしの山男』
これは旧作なのですが、神楽を行っている集落は山深いところにあり、道中でなんとも空気感が変わるような気配を感じる場所もありました。
こういうところの先には人ではないものが暮らしているのかもしれません。
この絵では人間が、妖怪の山男の棲家にうっかり迷い込んだ場面を描いています。
白白庵 オンライン+アポイントメント企画
災厄を祓い、幸福を招く現代の絵画展
会期:2021年6月5日(土)午前11時~14日(月)午後7時
会場:白白庵1階エントランスギャラリー
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