フェス出展者さんに聞く③赤ちゃんとママパパの好奇心を引き出した「残像」[芝浦工業大学 デザイン工学部 益子宗先生]
ひきつけられる「残像」の映像
会場の大きなスクリーンに投影されていたのは、赤ちゃんを上から見下ろした映像。赤ちゃんが足や手を動かすと、その動きが残像のように描かれて、言いようのない形状の面白さに引き込まれます。
映像を見てから、また赤ちゃんの方に視線を戻すと、その動きがより味わい深く感じられる不思議さがありました。
この展示、「好奇心の残像」は上部に設置したカメラで撮影した動画の「動きの残像」を何秒か残して表示しておくというもの。持ってきてくださったのは、芝浦工業大学デザイン工学部メディア体験デザイン研究室の益子宗先生です。
赤ちゃんに対する試行錯誤は少し怖い
益子先生にフェス参加についての感想を伺いました。
ーどのようなきっかけで今回「教えて!赤ちゃんフェスティバル」に参加されたのでしょうか?
益子:当研究室では、デジタルの技術を使ってリアルな空間に新しい付加価値をつけていくことに取り組んでいます。
2023年8月ごろ、赤ちゃん研究所の方から、会場のアイデアのブレスト会に参加しませんか?とお声がけをいただきました。
そこで簡単にアイデアを出して、ポンチ絵を見せてみたら「やりましょう!」ということになって。お盆明けにワークショップがあるからそこでやってみてくださいと言われて…。あれよあれよという間に、気づいたら参加することになっていました(笑)。
赤ちゃんを対象としたおもちゃで、デジタルを活用したものはまだあまりありませんよね。また、デジタルを活用して赤ちゃんの動きを観察するというところもまだまだできていません。そのあたりに挑戦することが出来たら面白そうだなと思っていました。
それと、私は赤ちゃんそのものに興味はあったのですが、同時に赤ちゃんはとても繊細な対象なので、自分たちでセンサーをつけてみようとか、いろいろ試行錯誤するのは怖いなという思いもありました。
そんな折に赤ちゃんの専門家である「ピープル 赤ちゃん研究所」の方たちと一緒にプロジェクトを進められるのはとてもありがたいことでした。赤ちゃんに対して何か試みることが、大丈夫なのかどうかという線引きをアドバイスしてもらえるので。
お母さんがしたこと、触れたことに興味を持つ赤ちゃん
ー実際に参加してみて、どんな気付きが得られましたか?
益子:自分たちがやりたいことに対して、どのようなアプローチがいいのかを、いろいろな方法で試すことができたのはよかったと思います。実際に参加してみて、「こういう形だとできない」とか「これだと赤ちゃんにとって危ない」というラインも見えてきましたね。
ほかの展示も含めて感じたのは「赤ちゃんは動くものにとても反応するな」ということです。それと赤ちゃんは、(赤ちゃん自身ではなく)お母さんがしたことや、お母さんが触ったものに、興味を持っていく感じもしましたね。
益子:私たちは、赤ちゃんだけでなく、保護者の方にどう思われるかについても気をつかいながらやっていまして、実際に作品に対する保護者の方の反応を見ることができたのもよかったです。
今回のイベントのテーマは「赤ちゃんの好奇心をはじけさせる」というものでしたが、保護者の方がいかに赤ちゃんに興味を持って、うれしく感じられるかみたいなところも注目すべき点だと思うんですよ。
だから今後はもう少し、赤ちゃんの動きや行動とか感情などをうまく親御さんに伝えられるような仕組みやプロダクトに挑戦してみたいと思っています。
ー今後「赤ちゃん研究所」に期待することがありましたら教えてください。
益子:身近に赤ちゃんがたくさんいて、いろいろと試すことができる環境はなかなかありませんので、これからもそういった機会を作って、観察や実証実験をさせていただけるとありがたいなと思います。
大学の中で考えているだけだと、「赤ちゃんはこれぐらいの大きさだ」「赤や黄色に反応する」…みたいに、すべて想像で終わってしまうんですよね。
実際に赤ちゃんに触れてみると、全然違うことが多いですし、「こんな観点では全く意味がなかった」「もう少しこの部分を深く考えなければ」みたいなものが現場でものすごく出てくるんです。
ーー実際に赤ちゃんを目の前にした試行錯誤に勝るものはないのですね。今日は興味深いお話をありがとうございました!
(まとめ、聞き手:プレーンテキスト 鹿野恵子、聞き手:clockhour 黒川成樹)
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