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読書感想文【護られなかった者たちへ】

護られなかった者たちへ(中山七里 NHK出版)

10月1日から公開される映画の原作。

本を読む前から、ミステリーであること、生活保護に纏わることが事件に大きく関わるのだとわかった上で読んだ。

あらすじを書こうかと考えたものの、ミステリーは多くを知らないまま読む方が面白いと個人的には思っているので、やめておく。

ハラハラドキドキ、ミステリーとして存分に楽しんだ。

けれど何よりも私を揺さぶったのは、生活保護に関する話だ。
それは頭で理解していたものよりも随分と厳しく、そして難しいものだと感じた。

私は疾患を持っており、内部障害者にあたる。
だから社会福祉制度を利用する。
が、これが一筋縄ではいかない。

日本はなんらかの制度を利用する際には当事者からの申請が必要だ。
それが決まりなのだから、今はそこをどうこう言うつもりはない。
ただ、この申請がとても大変だ。
いろんな書類を揃えるのはもちろんだが、提出書類の中には記入方法が独特でよくわからないものも少なくない。
それでも記入に不備があれば手続きは止まってしまうので、結局窓口で担当の人に聞きながら書きこまないと仕上げることができないこともある。

この「担当の人」には(こういう言い方は失礼かもしれたいものの)当たり外れがあると思っている。

とても丁寧に話を聞き対応してくれる人にあたると、申請書類はスムーズに提出できる。
申請が通るかどうかの可否は担当の人では判断しかねる部分で、だからなにも言われないけれど、「ここどうしましょう…」と聞けば「ここはこう書いた方が良いですよ」と、それとなく導いてくれることも(ごく稀だが)ある。

対して、「あ、この人あかんわ」と思う人の場合はろくに話を聞くこともなくチラッと申請書類を見て「これだとダメですね」と言っておしまい。
「添付されてる書き方を見てもらいながら書いて貰えば良いんですけどね」とか言われると、その時は特に反論せずに「書き直してきます」と出直す方が良い。

それは電話口でも同じだ。
全く同じ質問をしても受話器の向こうがAさんだと、もう申請自体できないなと諦める気持ちになるのだが、Bさんになると申請してみようかと一歩前進することがある。
(だから私は電話で問い合わす時は、Aさんのような人に対応された場合は、日を改めて違う人に同じ問い合わせをするようにしている。めちゃくちゃ緊張するし、とても嫌ではあるけれど、突然話が進むことがあるのだ)

担当者も人間であり、虫の居所が悪い時だってあるだろう。
常にこちらが求める対応ができないことはあるだろう。

それでも、こちらはいつだって窓口に座る「その時」が真剣勝負なのだ。

そんな風に考えている。

そしてこの「護られなかった人たちへ」に戻る。
もちろんこの本はフィクションで、現実の話ではない。
それでもこうした事案があっても、おかしくはないだろうなと思う自分がいる。

私が申請してきた制度等は、ぜひ利用したいが今日明日にでも手にしないことには生命の危機に瀕する、というような類のものではなかった。
が、生活保護申請をする人たちは、できる限り早く申請が通らないと困る。
一日一日が勝負だろう。

いつだって悪い奴らはいるのだ。
生活保護に限らず、なんらかのサービスを不正に利用しようという者がいる以上、その人が本当に受給するに値する人なのか、サービスを利用するに値する人なのかを判断するのに厳しさは必要だろう。
ただその判断が、どこまで正しく行えるのだろうかと疑問に思うことは、ある。

この本を読んで「正しさ」とはなんなのかと感じずにはいられなかった。

そしてこういう物語は、生活保護の申請が必要であろう人たちが読むことはない。

図書館で借りることは可能でも、果たしてそこまで意識が向くだろうか。
私個人の考えだけれど、本を読むという行為は、精神的にゆとりがある時でないと無理だ。
幼い頃から本に馴染んでいて、本を読むことで精神的に安定する人もいるだろうが、そういう人たちの多くは「幼い頃から本を読む習慣」を身につけることができる安定した場所で暮らしていたとも言い換えることができるだろう。

筆者がこの本を通じて、いろんな人に生活保護について少しでも興味を持ってもらえるようにと願っているならば、確かに一定の効果はあるだろう。
けれど、きちんと声をあげてと願う「護られなかった人たち」に届くかといえば、それは難しいように思う。

この本はあくまでも物語なのだ。
それでもこうした物語が生まれるのは、単に物語として面白いだけではなく、そういう話を生み出す社会環境が背景にあるのだということも頭において置かねばいけない。
そんな風に感じた。

なんだか長ったらしい読書感想文になってしまった。
反省。

私はこれまであまり本を読んでこなかった。
だから今この年齢になって、ほそぼそと読み始めている。
そんな中で心惹かれた作品について感想を書いてみた。
これからも時々、こんな風に唐突に感想を書いてみたいと思っている。

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