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【星涯哀歌2】帰ってきたウル【過去作】

ウルが帰ってきたと誰かが言った
わたしは黙って
カペラ産の苦い酒をグラスに注いだ

酒場はさっきからウルの噂で持ちきりで
ウルと話したことがあるという
地球生まれの男が
まるで自分がウルであるかのように
ウルの武勇伝を語っていた

ああ でも もしも
ウルが帰ってきたというならば
遠い黄色い小さい太陽に
自ら飛び込んでいったのは誰?
火星の血と金星の血と地球の血を
みな高温に蒸発させてしまったのは誰?

席を立って
化粧室で鏡をのぞけば
顔だけは美しく若く整えられた
老いた女がこちらを見返す

戻ってみると
酒場は静まり返っていた
中央のテーブルに
小さな箱が
濡れたように黒く穴のように暗く

ウルが帰ってきたと誰かが言った
これがウルだと誰かが言った
わたしは黙って
カペラ産の苦い酒をひといきで飲み干した


※※※

ごめんなさい、って誰に謝ってるのかわかりませんが、ごめんなさい、これは二次創作です。どこが二次創作なのか非常にわかりにくいと思いますので説明します。

ウルとはキャプテン・フューチャーに登場する悪役ウル・クォルンです。彼は情婦ヌララと壮絶な最期を遂げるのですが、ウル・クォルンの女ってヌララ一人だったと思いますか? 私はそう思いません。絶対他にいたでしょ。というわけでこの詩の語り手はヌララではない誰かなのです。そんな人キャプテン・フューチャーには出てきません。出てこないから私が書きました。

というわけでこれとっても演歌ですよね! なんでウルが黒い箱になってるかは想像しましょう。それがないとこれはSFじゃなくて単なる演歌になります。あくまでもこれはSF演歌。そもそも星涯哀歌のタイトルは野田昌宏の影響下にありますので、SF演歌ではなくSF浪花節かもしれません。

そしていまわりと問題提起したい気分なのですが、浪花節とは、もしかしたら、叙事詩だったりしませんか?

(でも私のこの詩集は実は抒情詩かもしらん)

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