佐々宝砂

怪奇幻想とゴアと洋楽好き。趣味は焚火飲酒喫煙濫読。図書館好き読みきかせボラ。呟怖の人。

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【ショートショート】目が覚めると

ベッドから起き上がるとそこは見知らぬ部屋だった。殺風景なコンクリートの壁と床、窓もなく、ベッドの他にはシンプルなスチールのテーブルとタンスがあるだけだ。なんの装飾もなく、TVもパソコンもカレンダーもない。もちろん僕の部屋ではない。そして僕の妻も息子もいない。 ここはどこだ。僕は混乱したままベッドを出た。ベッドの下には使い古された灰色のスリッパがあり、それは僕の足に奇妙になじんだ。とりあえずあたりを見渡すと、テーブルの真ん中に赤いボタンがあり、「緊急時に押すこと!」と書いてあ

    • バーStairsにようこそ 第一夜

      やあ、いらっしゃい。ここはバーStairs。 上に行く階段と下に行く階段があるけど どっちにも行かない人が酒を飲む踊り場。 とりあえずビールでもいいけど、 カクテルを頼んでくれると嬉しいな。 でも、とりあえずビールだね? *** 1.岐路 私は毎日岐路に立つ。朝の窓を開け放ったとき、お昼どきのコンビニで小銭を落として放置したとき、アサヒとキリンとサッポロとサントリーとどれにしようか悩んで結局奮発してヱビスにしたとき、私は毎日どころか毎分ごとに岐路に立ち、朝の窓を開けな

      • 二十年の季節の物語

        その星では、四季それぞれが二十年の長さを持つ。 1.祖母(夏のはじめの生まれ) もう夏が終わるのだと父が言う。父は冬生まれでこれまで二季を過ごしている。祖父はといえば地球生まれなので何季とか言えないらしい。三百六十五日で春夏秋冬全部が巡るなんて、祖父が生まれたところはなんて目まぐるしいのか。私は夏のはじめの生まれで一季しか知らないから、夏以外の季節を想像できない。汗と雑草と水泳の夏、と父は言うけど、汗も雑草も水泳もない毎日ってどんなのだろう。私は少し怖い。 2.祖父(夏

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