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クィア・ジョーン【新作】

あたしはとてつもなく頭がよかったので
小さい時からちゃんときっちりわかってた
あたしは異常だということ
普通じゃないということ
そして何よりもサイアクなことに
普通のフリもできない不器用だってこと

あたしにはおちんちんがついてたけど
いらなかった
お金をためて手術すればいいのは
ちゃんときっちりわかってたので
お金をためた
電子通貨をあれこれやって
遊び半分でプログラム書いて
お金をためた

さてさっくり手術しようと
思ってふと考えた
あたしは何者なのだろう
あたしは人の考えてることがぼんやりわかる
あたしはほんのちょっと先のことがわかる
そしてそんな人が他にいないこともわかる

クィアなセカイは居心地いいけど
ジョンという名をジョーンに変えても
クィアな友人たちは歓迎してくれるけど
あたしはほんとはあそこでもクィアだ
だってあたしはお化粧しない
おっぱいがほしいわけでもない
ただただおちんちんがいらないのだ

手術してもしなくても
あたしはどこにいてもクィアなのだろうか

まあ手術はする
長い間目標としていたのだもの
あたしが理想とする身体は
きっと男ではなくて女でもなくて
なにか超えてゆくもの
あたしは実際超人なのだから
性だって超えてしまいたいのだ

ほんのちょっと先がわかるあたしの能力は
あたしの意志を継ぐものがいないこと
あたしの居場所は結局ないこと
そんな未来を告げてくるのだけど

それがなんだろう
あたしはあたしでいたいだけだ

もうオッド・ジョンなんて言わせない
あたしはクィア・ジョーン

※※※

これは一応未発表の新作です。アイデアだけは数年前に思いついて最後の2行だけメモしてあったものです。オラフ・ステープルドンの『オッド・ジョン』が元ネタなんですが激しく改変してしまいました。作品としてはSF味が薄く超自然要素も単なるフレーバーでそのくせメッセージ性だけは強く、私の好みでない作だと思います。

やたらお利口さんな超人を主人公にした『オッド・ジョン』は好きなSFですが、ラストのほうの人間関係がどうもあまり好きでなく。終わり方そのものはシビアで好きなんですけどね。類似テーマの『シリウス』とどっちが好きかと言われたら『シリウス』っていう人が多そうな気がしますが、私は残酷な『オッド・ジョン』が好きです。

星涯哀歌に入れようと思いましたが、やっぱりトーンの違いが気に入らないので、単発で発表することにしました。星涯哀歌15は今夜更新します。


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