おいしさは二の次?売り場&パッケージから見るオランダのヘルシー食材アプローチ(後編)
写真:おしゃれなパッケージのビーガン加工品。
★前編はこちら。
食への関心は近年益々高まりを見せています。日本においては、生産地や原材料、有機栽培などにこだわりながらも商品のシズル感をどのように表現するかなど、パッケージに「おいしい」メッセージを込める工夫がなされていると思います。
ここオランダにおいては、その方程式は必ずしも成り立ちません。というのも、生活のなかで「おいしい」が必ずしもトッププライオリティではないからです。勘違いしないでもらいたいのは、オランダ人が「おいしさ」に無関心ではないことです。「Lekker」(おいしいのオランダ語)は頻繁に使われる単語ですし、テレビでもクッキング番組が毎晩のように放映されていますし、旅行先で人気の東南アジア系のレストラン(タイやベトナム料理)も随分増えています。
とはいえ、「今晩何にする?」や、友人と会う約束した時の「何食べたい?」というような会話は圧倒的に少なく、レストランでもお互いの料理をシェアするようなことは滅多にありません。そんな淡白さに砂をかむような思いをすることも多く、翻って日本がいかに“おいしい”に貪欲で、しかも、口福を一人のものとせず、共有したいと思っているかを思い知らされます。
そんなオランダで、おいしさ以上に吟味されるのは、「健康にとってよいか」「環境にとってよいか」「原材料は何か」です。日本とは異なるアプローチをとる、オランダのGezondheid(健康によい)な売り場、食品パッケージを探ってみることにしました。今回は後編として、「パッケージ」にフォーカスしてお届けします。一般的なスーパー、オーガニックのスーパーを巡りながら、パッケージやメッセージで特長を出す商品を探してみました。
自然由来の素朴さを打ち出す
コリアンダーやパセリなどの香草は、切り売りパックもありますが、なんといってもインパクトがあるのが、ポットごと売られているタイプです。摘みながら使って、使いきれなければ育てることも。
写真:ポットごと売られている香草。
卵は紙パックが主流です。蓋にある「Beter Leven」というラベルは、卵や肉などの畜産物の飼育環境を3つ星で示す認証マークです。卵の場合は、屋内で1㎡に鶏9羽の飼育空間を条件として、1つ星は平飼いと止まり木や砂場などの遊具、2つ星はさらに屋外に自由に行けること、屋外では4㎡に1羽の広さを確保、1グループ最大6,000羽まで。3つ星はそれらの条件に加え、屋内は1㎡に6~7羽の空間確保、くちばしキャップの禁止などが義務づけられています。
写真:卵のパッケージはラベルに注目。
写真:Beter Levenの他、EUのオーガニックファーミング認証ラベル(左上)、オランダ国内のSkalという機関が検査、認証を行っているEKOラベル(右上)のラベルもある。
色とテキストで効果的にメッセージを伝える
生産者の顔を印刷したパッケージは日本でよく見かけますが、オランダでは最近登場するようになりました。ここで紹介するのはZuiver Zuivelという乳製品のブランドです。Zuiverはピュア、Zuivelは乳製品という意味です。ルドルフ・シュタイナーが提唱した有機農法であるバイオダイナミックを採用し、グリーンエナジーのみでプロダクトを生産する25の酪農家によるブランドです。
写真:左からケフィア、乳脂肪半分のヨーグルト、カルネミルク。カルネミルクはバターミルクとも呼ばれる酸味のある乳飲料。
酪農家の写真の右下にアルファベットの頭文字があり、側面にはその文字から始まる酪農家からのメッセージが書かれています。例えば、ケフィアでは、「Jaargetijden」(季節)をタイトルに、酪農家の四季を情緒豊かに伝えています。
別の側面には、表面左下の鳥のロゴの由来が書かれています。農地と野鳥との共生を目指し、オランダの野鳥保護団体Vogelbescherming Nederlandと共同で開発した認証ロゴです。このロゴを使用するには、野鳥保護団体が課した基準を満たさなくてはいけません。写真を単色にすることで、酪農家の真摯な取り組みが伝わってきます。
写真:乳脂肪半分のヨーグルトには「抗生物質」、カルネミルクには「生物多様性」について書かれている
また、紙パックの牛乳やヨーグルトではプラスチック注ぎ口のタイプ(*写真参照)が多いですが、このブランドはあえて不便な昔の形を採用しており、かえって好感がもてます。
写真:よくあるプラスチック注ぎ口の牛乳パック。
雑貨のようなおしゃれなデザイン
前述のZuiver Zuivelのようにメッセージを全面にだすタイプもあれば、グラフィックデザインに強いオランダらしい遊び心溢れる商品もあります。
写真:(左から)フムス、ブルスケッタ、ガガモレが作れるハーブミックス。紙にマット加工をほどこし、デザイン性と落ち着きを表現。
100%自然由来、グルテンフリー、msg不使用が表面に表示されています。msgとは、化学調味料、うまみ調味料のことでです。
写真:フムスペーストのパッケージ。
写真:リンゴとシナモンのシリアルのパッケージ。
Holieは2018年に誕生したばかりの会社で、ヘルシー&ビーガン、おしゃれなパッケージが売りです。シリアルは、子供が喜びそうなフクロウのイラストで仕上げながらも、「野菜を食べることはあなたにとって、そして世界にとってもよいこと」「スーパーで売られている子供用のシリアルよりも70%砂糖を控えている」とメッセージがパッケージにきっちり刷り込まれています。オランダ人は、このような健康をごりごりに押すメッセージに辟易したりしないのだろうかと思いながら、飲み物コーナーに行くと、さらに強烈な商品に出くわしました。
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