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増えるメイク男子。韓国市場から見る、未来の「メンズコスメ」市場

by パケトラライター 二俣愛子(韓国・ソウル在住)

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Photo:シャネルの男性用化粧品「ボーイ ドゥ シャネル」シリーズ ©CHANEL

「シャネル」からファンデーションをはじめとする男性用のコスメラインが登場したのが、2018年の秋。世界初のローンチ国となったのは、本国フランスではなく、韓国でした。韓国が、どの国よりもメンズコスメ文化が浸透しているということを改めて印象付けたのではないでしょうか。

今回は、日本でなかなか浸透しにくいメンズコスメというジャンルが、韓国ではどのように扱われているのか、また、どうしてここまで浸透していったのかについて、実際に現地で生活をしている中で肌で感じたことから考察していきたいと思います。

大充実のメンズコスメコーナー

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Photo:こちらは韓国の国民的なコスメストア「オリーブヤング」のメンズコスメコーナー。

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Photo:こちらは韓国の「ダイソー」にあるメンズコスメコーナー。女性アイテムに比べて数は劣るものの、それでもスキンケアアイテムが大充実。

韓国では、街中のいたるところでメンズコスメを目にすることができるほど、手に取りやすい環境にあります。日本では新宿・伊勢丹MEN’S館や阪急メンズ館などの大手百貨店に行かなければ、なかなか一度に多くの商品を手に取り比べることは難しいように思います。

上の写真は、韓国の大都市から小さな街まであらゆる場所に展開している国民的コスメショップの「オリーブヤング」と、「ダイソー」で撮ったものです。どちらも観光などで訪れるような大都市の店舗ではなく、少し離れた場所にある店舗。このような場所でも、メンズコスメを気軽に購入することができます。もちろん、大型店舗に行けばさらに品揃えは豊富になります。そのくらい韓国では、男性用のコスメが浸透していることがわかります。

スキンケアだけじゃない。メイクアップ用品も揃うラインナップ

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Photo:男性用のコスメブランド「BLACK MONSTER(ブラックモンスター)」の化粧品。画像左からBBクリーム、クッションファンデ―ション、毛穴の凹凸を滑らかにするプライマー、リップティント、アイブロウ。

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Photo:コスメブランド「LAQLANC HOMME(ラグランオム)」。左から、クッションファンデーション、BBクリーム。モノトーンで統一された男性が持ちやすいパッケージ。

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Photo:「LAQLANC HOMME」のクッションファンデーション。女性用と変わらない。

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Photo:男性用のリップバーム。ナチュラルな無色と、ほんのり色づく2色が2in1になったタイプ。

「オリーブヤング」で手に入るメンズコスメは、スキンケアやシェービングアイテムに限りません。中でも、肌をきれいに見せるためのベースメイク製品や、それに合わせたナチュラルな血色感を演出してくれるリップなども多数ラインナップされていることに驚きます。また、毛穴や肌の凹凸感を滑らかに見せてくれる「プライマー」といったアイテムもあり、これには女性も顔負けです。

男女関係なくメイクをする時代。ユニセックスのコスメブランドが人気を集めている

韓国ではユニセックスブランド「LAKA(ラカ)」が人気を集めています。ナチュラルなのにお洒落感があり、肌にすっと馴染むニュアンスカラーが使われていると、特にリップアイテムやチークが話題です。

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Photo:ユニセックスブランド「LAKA(ラカ)」のチーク。

白のパッケージに黒のブランドロゴをサラリと乗せたシンプルなデザインで、女性も男性も持ちやすいアイテムになっています。また、男性モデルを起用するなど、ユニセックスブランドというのが一目でわかります。

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Photo:モデルには男性も起用されている。

実は韓国では「LAKA」のほかにも、女性用コスメブランドでありながら男性を広告モデルに起用しているブランドが多くあります。これは特に10代~20代前半のティーン~ヤング層(ミレニアル世代後半~Z世代)のコスメブランドに見られる、近年の特長のひとつ。彼女たちが大好きな同世代の男性アイドルが積極的にメイクを施していていることから、抵抗はないのだと思います。

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Photo:コスメショップで見つかる「LAKA」のコーナー。男性と女性モデルを起用し、どちらにも使えるナチュラルさが魅力。

韓国でメンズコスメが浸透している理由とは?

実際に生活をしていく上で、韓国でメンズコスメがここまで浸透している理由を考えてみました。大きくは以下の4つが挙げられます。

①手軽に手に入る

先ほどもご紹介したように、韓国では街中のどこにいても、まるでスーパーで買い物をするような感覚で、気軽にメンズコスメが手に入る環境があります。これは、需要があるから実現していることではありますが、「欲しい」と思ったタイミングですぐに手に入れられるということが、メンズコスメの浸透を後押しする要因になっているのではないでしょうか。

②見た目が就職にも関わるほど重視されている

「見た目が就職にも響く(=生活に響く)」ということは、韓国では当たり前の事実。それもあり、日頃から男性もスキンケアを意識する人が多いのだと思います。特に就職活動中に必須の証明写真にいたっては、フォトショップで加工をして最高の状態で提出するのがデフォルトなのだとか。それほど「見た目重視」思考が根強い傾向にあることで、メンズコスメの需要があるのだと思います。

③幼少期から肌ケアを意識する環境にある

これは既出の「見た目重視」という考えにも通ずるものがありますが、特に幼少期から男性も日焼け止めや化粧水を日常的に使用しているということです。小さなころから両親が大切に子供の肌を守ろうと、保湿ケアや日焼け止めを欠かさないのだと、韓国人の友人に教えてもらいました。

また、平日の午前中から皮膚科に行けば、10代~年配の男性まで肌のケア(ニキビ肌ケアやレーザー治療など)をしているという光景が日常です。

④テレビ・芸能人からの影響

これもメンズコスメが広く浸透していった大きな要因だと感じています。世界的に有名になった韓国人アイドルたちを見てもわかる通り、彼らはファンデーション、アイライン、アイシャドウ、アイブロウ(眉毛)、そしてリップと、女性とほぼ変わらないメイクアップを施しています。

また、テレビをつければ、綺麗に整えられた眉毛と、ファンデーションで仕上げたツヤやかな肌が印象的な俳優やお笑い芸人、アナウンサーたちが活躍しています。日本でも男性芸能人はメイクを施しますが、かなりナチュラルで、肌質を整えたり皮脂を抑えるだけという人も多いかと思います。

しかし、韓国の男性芸能人たちは往々にして「綺麗にメイクアップ」された状態がベースになっているため、「男性がメイクをする」ということに対して、一般の人(特に若い世代)にとっても抵抗がない、または「あんな風になりたい」という憧れがあるのかもしれません。

進化する韓国のメンズコスメ界。日本での市場は?

数年前に韓国を訪れた時に比べて、男性が化粧を施してコスメブランドの顔となったり、メンズコスメのラインナップが拡大されていたりと、その市場の変化を感じています。特に最近では、アートメイク(眉毛のタトゥー)が男性の間でも人気になり、女性に限らず美容クリニックで男性をよく見かけるようになりました。

今、K-POPアイドルが世界的に注目を集めていることからも、さらに韓国でのメンズコスメ&美容市場は拡大を続けていくのかもしれません。そして、これに関しては日本の男性にも少なからず影響が出ているようです。

彼らのファンの中心であるミレニアル世代後半~Z世代(1990年代~2000年代生まれ)の男性の中には、メイクを始める人、メイクに抵抗がない人が増えているようです。また、近年のジェンダーフリー志向に触れ、「男性はこうあるべき」「メイクは女性がするもの」という考えに固執しない世代が増えていることも、一つの要因でしょう。

メンズコスメ市場は、まだまだ伸びしろがありそうです。

ビジネスのヒントに。「パケトラ」

by パケトラライター 二俣愛子(韓国・ソウル在住)


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