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ヒカ碁読書感想


数年前友人に「ヒカルの碁」をオススメされて、読了後最高だな……ってなって読書感想文を書いてべったーかふせったーかに投稿していたんですけど、Xの連携とか認証とかが色々面倒になり消してしまったため、noteに再載。

主に佐為について。

読了して1ヶ月くらい経って感想を書いているため若干あやふや。
(そこから更に経っているため読み返すと恥ずかしいが、手を入れるとほぼ直して違うものになってしまう気がしたので極力そのままの状態で投稿します)

本編後半の内容を多く含むため、ネタバレを避けたい方は注意されたし。

ヒカ碁最高でした。
まず囲碁のルールを知らない人間(私のことだが読者の多くはきっとそうだと思う)に対局をぐいぐい読ませちゃうこの作品、まじで漫画が上手い。
対局のシーンは描き手目線だとずっと座って打ってるから画面的には体の動きが少ないはずで、盛り上がりとかを描くのが難しそうって思うのに。
逆に囲碁知ってる人からしたら描写どうなんだろう。

漫画や映画の描写、終わり方って作者のクセ(癖、好みと言ったらいいのかな)が出ると思うんだけど、同じ人の作品をいくつか見てこの作者(監督)はこういう書き方をするのが好きなのかな、みたいなことを考えることがあるけど、この作品は終わり方がとても鮮やかだと思いました。

友人に感想を話したときは「表現が新しい」と多分言ったんですが、これはわたしはこういう終わり方の漫画を他に思い出せなかったからです。
あとこれ1999年〜2003年の漫画なんだけど言われなかったらそうは思わないから。
そんなに色んな本を読んでるわけじゃないのでこういうのいっぱいあるよってことだったらそこはごめん。
爽やかですっきりとした読後感がありました。

好きなキャラクターは佐為です。
これは私がこのお話の中で好きな部分に寄るところが大きいのでそこの話をしますが、塔矢行洋氏との対局から、佐為が理解ったところにひどく感銘を受けたからです。

佐為は碁を打ちたいという願いを抱きつつ、でも何故自分が霊体となってこの世に残ることを許されているのかわからないんですよね。
自分の願いが聞き入れられたからなのか、その他の理由なのか。

それが「自分はこの瞬間の為にここにいるのだ」とわかったことというのが、自身が好敵手と戦い勝利するとか神の一手を打つということじゃなくて、自分の一手を次の誰かに繋ぐ為だったってことを理解したあの瞬間がすごく痺れました。

私は絵を描くので、絵が上手くなりたい、誰と比べるものじゃないけど誰かよりいい絵を描きたいという気持ちは多少なりともあります。
これがヒカ碁の中での「神の一手」に辿り着きたいという願いに重なる部分があるんじゃないかと思うんだけど、だからこそ佐為自身が辿り着きたいと願っているんじゃないかと思う。

でも違う。
それを怒ったりとか嫉妬したりとか人間らしい感情がある上でそれに支配されていないところが好き。
千年の時を超えてるから悟って神のような思考を持っているから大丈夫ってわけじゃなく、ああ考えられるとことが好きです。
私は自分が何もできないのに楽しそうに何か(ここが碁だったり絵だったりするわけだが)をしてる人を見てるの、めちゃくちゃ嫉妬に狂うよ。こう思うことも相手も悪くないけど。

自分が頑張って見つけた上手いやり方とか情報とか、ぶっちゃけ人に教えたくないし、自分だけのものにしたいけど、それだとその文化全体の水準は高まっていかない。
でも今を生きる人たちは、これまでの歴史の中で会ったこともない誰かが築いてくれた基礎の上で技術を過去の人たちより効率的に高めていけるわけで、そんな風に自分もいつか誰かの糧になるんだなみたいな。
そんなことを思いました。
その上で自分の作品やこれまで高めてきた技術が、自分のためじゃなかったんだ……ってなったらそれをスッと受け入れられるのかな?いやどうかな……。というのが佐為が好きなポイントです。

佐為だけでなく、あの物語の主人公であるヒカル自身もそうなのがすごいよね。
佐為が繋いで、ヒカルが到達するに留まらず、ヒカルも意図に関わらず誰かに繋いでいくんだろうなって、それが皆そうなんだよって終わり方。鮮やかすぎません?

ヒカルと佐為の突然の別れも、お互いが納得してちゃんとさよならとありがとうが言いあえるなんてことも人生においてそんなにないよなぁ……そうだよな……みたいな気持ちで読みました。
尊いポイントです。
しかもなんでもない眠たい朝(朝だっけ)にそんな瞬間がくるってのがまたさぁ〜〜。

ヒカル自身も急速に成長していく中で出会いや別れを繰り返しているところもいいなと思う。
何もかも上手くいくわけではないし仲のいい誰かとずっと一緒には居られない、居心地のいい場所に留まれないのがリアル感があるというか。

囲碁がどんどん強くなっていくって話の下地に、出会いと別れとか、全ての人に通ずるテーマが敷かれているんだなと読んでて思いました。

この感想を書いて塔矢行洋氏ってこうして文字を見て初めて思ったけど名前が彼のネタバレなんだね。(ネタバレ以外の言い方がある気もする)
彼も佐為との再戦を望んでいたけどもう打てないことを作中でネガティヴに書かれず、どんどん変わってゆくのがすごいなと思いました。待つとか望むってことが何もしないってことではない。

あと加賀さんがすごい精神的に大人だと思う。
院生の試験に落ちたら〜のくだりで中学生時点であのセリフが出ることはなくない!?
大人勢だと倉田さんがかわいいなぁ憎めないなぁって感じ。

その時言ったことと細かい部分は変わってしまってると思いますが最高の漫画でした。
ヒカ碁とかハンターとか再燃して読み直してたけどマジで漫画が上手い・面白い。


おわり。

再掲するにあたってヘッダーあったほうがいいのかって書き始めたら、色塗るときに幽霊(かの是非は別の話だが)は影はないのでは?と悩んで、影がないってことは彼には光が当たらないってこと…?と苦しむなどしました。

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