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やる気が出ないへの対処法

こんにちは、精神科医ぱぐです。今回はやる気が出ないときの対処法をADHD(注意欠如多動症)の病態と絡めてお伝えします。

「やるべきことはわかっているのに、どうしてもやる気が出ない…」こんな経験はありませんか?誰しも感じたことありますよね。普通の人でもやる気が出ないときはありますし、特にADHD傾向を持っている人にとっては、より頻繁に感じられることがあります。実際、ADHDの診断がつかないレベルでも、傾向がある人はたくさんいます。そのため、やる気の問題を感じるのは決して珍しいことではありません。私自身もその傾向が少しあり、やるべきことが分かっていても、なかなか手をつけられなくてつらいときがあります。

今回は、やる気が出ない時の具体的な対処法について、普通の人にもADHD傾向のある人にも役立つ方法をお伝えします。

なぜ「わかっているのにやる気が出ない」のか?

まず、やる気が出ない原因の一つとして、脳内のドーパミンの働きが関係しています。ドーパミンは、やる気や報酬感覚を司る神経伝達物質で、何かを達成したときやメリットが得られるときに分泌され、私たちの行動を促進します。しかし、ADHD傾向があるとドーパミンの分泌や調整がうまく機能しないことが多く、普通の人よりもやる気が出にくい状況に陥りやすいです。

ただし、ドーパミン不足によるやる気の問題は、誰にでも起こる可能性があります。大きな目標や、すぐに報酬を得られない作業を前にすると、誰しもやる気がなくなってしまうことがあります。ADHDではなくても日常生活の中で「なんとなく集中できない」「やる気が出にくい」と感じる人は少なくありません。

1. メリットを口に出して確認する

最初の対処法は、やるべきことをやったときのメリットを意識することです。人間は、行動するためには何らかのメリットが必要です。特にADHD傾向のある人は、即座にメリットが得られないことに対してやる気が出にくい特徴があります。そのため、あえてメリットを言葉や文字で何度も確認することで、脳に「これはやる価値があるんだ」と認識させ、ドーパミンを分泌させる方法が有効です。

具体的な方法:
• 口に出す:やらなければならないことに対して「これをやると〇〇が得られる」「〇〇をクリアすれば次が楽になる」と何度も口に出してみましょう。
• 書き出す:スマホのメモや紙に、「この作業を終わらせたら〇〇ができる」「終わればこんなに楽になる」と書き出し、目に見える形にすることで脳がメリットを強く認識します。

これは、普通の人にも効果的な方法です。メリットを意識すると、脳がやる気を出しやすくなり、行動を促進します。ADHD傾向の有無にかかわらず、この方法は広く使える対策です。

2. やることを小分けにする

次に重要なのは、やらなければならないことを小さく分割することです。大きなタスクは、メリットを感じにくいため、ドーパミンが分泌されにくく、やる気が出ません。しかし、タスクを小分けにして一つ一つクリアしていくと、少しずつ達成感を得ることができ、ドーパミンがその都度放出されます。

具体的な方法:
• タスクを分割する:たとえば、「部屋の片付け」という大きなタスクがある場合、「今日は机の上だけ片付ける」「次はクローゼットの中だけ」といったように、小さな目標に分解して進めていきましょう。
• タイマーを使う:25分間集中して作業し、5分休憩を取る「ポモドーロテクニック」を活用して、集中力を途切れさせない工夫も効果的です。

まず1歩を踏み出すことで、その後意外とスムーズに作業が進んだ経験はありませんか?これは、最初の一歩でドーパミンが分泌され、やる気が次第に高まる現象です。小さな成功を積み重ねることで、自然にモチベーションが維持されます。

この方法も、ADHD傾向がなくても効果的です。大きなタスクは誰にとっても負担が大きいので、細かく区切って取り組むことがやる気を出すポイントになります。

(ADHDについて補足)
ADHD傾向のある方は、どうしてもドーパミンが脳内でうまく調整されないことがあります。そうした場合、専門の医師に相談し、薬物療法という選択肢を検討することも一つの方法です。

ADHDの治療薬:
• ストラテラ:ドーパミンとノルアドレナリンの分泌を調整し、注意力ややる気を改善する効果が期待できます。
• インチュニブ:注意力の持続を助け、衝動的な行動を抑えるのに役立ちます。
• コンサータ:ドーパミンを増やし、注意力や集中力の向上、やる気の低下を改善する効果が期待できます。

こうした薬は、脳内のドーパミン不足を補う役割を果たし、やる気が出にくいという根本的な問題を解消する助けになることがあります。もし「自分もその傾向が強いかも」と感じる場合は、精神科で相談してみることも一つの選択肢です。

ただし、こうした薬物療法はあくまで診断が必要なレベルの場合に用いられるものです。診断まではつかなくても、やる気が出にくいと感じる人には、上記のような生活習慣や工夫を取り入れることが効果的です。

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