【連載】お人好しのキツネ その6【短編童話】

「そうかい」

 もの知りのフクロウはなんでも知っています。

 リスの冬眠の準備が終わっていることも、そのせいで森中のどんぐりがないことも。リスがヘビにコマドリの卵を食べるように言ったのも、リスがクマをそそのかしてアライグマに話しかけるようにけしかけたことも。

 それでも一つだけ知らないことがありました。

「キツネくん。君は一体何をお願いするつもりだったのかな? そんなどんぐりを三つも持って」

 そう言われてキツネは照れくさそうな顔をしました。

「うん。僕はね、本当はどんぐりは一つでもよかったんだ。僕の叶えたい願いは一つだけだったから。僕はね、さかさ虹が見たかったんだ」

 昔々、この森に立派な虹がかかりました。

その虹はさかさまで、珍しい虹がかかったその森はいつしか「さかさ虹の森」と呼ばれるようになったそうです。

「この間、コマドリさんとヘビくんとクマさんとアライグマくんと一緒に話していたんだ。この森の名前のもとになったさかさ虹を、一度見てみようって。それで僕どうやったらいいのかわからなかったから、どんぐり池にお願いしてみようと思ったんだ」

 フクロウは知っていました。どうやったらさかさ虹をかけることができるのかも。

「そうかい」

だから彼は静かにそう言っただけでした。

「だったらキツネくん。早いとこ君の願いを叶えようじゃないか」

「うん、そうするよ」

「ちょっと待ちなさい。願いが叶うところをみんなに見てもらおう。呼んでくるから待っておいで」

 そう言ってフクロウはファサッとと飛び立ちました。

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