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遺体無き殺人 4

柴田長太
柴田長太は伴蔵の家の隣に住んでいました。写真を見ると家は本当に隣で作りも伴蔵の家と瓜二つ。恐らく暮らしぶりも伴蔵と同じく貧しいものであったに違いありません。年齢は56歳。彼は窃盗で罪を犯し前科4犯通算3年1ヶ月刑務所に収監されていました。性格は横着で怠け者。酒癖が悪く、酒が入ると乱暴を働くため女房もいない独り身でした。
警察の聞き込みで妙なことがわかりました。「2月3日までは伴蔵の小屋から煙が上がっているのを見たのだが、4日から見えなくなった」という警察が犯行日時を推定した証言と「伴蔵は福島に出稼ぎに行ったと聞いた」という新たな証言の元々の出所は長太だったのです。
怪しいと思い、警察は柴田長太を署に呼んで取り調べをしたのですが、知らぬ存ぜぬの一点張り。警察の「伴蔵は殺された」という推察だけで物的証拠が何もない現状では決め手を欠き柴田長太は間もなく釈放されます。
警察はせめて遺体か遺品だけでも手がかりを見つけなければと手塚署長自らが捜索隊の隊長になり消防団へも応援を要請し伴蔵の自宅周辺や裏山、白龍湖などの大規模な捜索を始めましたが手がかりは何も見つけることができず9月が過ぎ、伴蔵が行方不明になってから7ヶ月経ち事件は暗礁に乗り上げてしまいました。

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