ページを探す
ある日、家のベルが鳴り玄関へ行くと中年の男性が立っていた。挨拶もそこそこに男性は「実は本のページを探してましてね」と言い、風呂敷を解き表紙だけの本の断片を見せてくれた。聞くと男性の祖父が後生大事にしていた本なのだが、遺産相続のごたごたで表紙以外は親族に持ち去られてしまったという。確かに私の店は不思議なものを扱うがこういったケースは初めてだ。男性に本の内容を聞くと「この世の真理の一部が記されていると聞きました」と言った。
当店では扱っていないと言うと「そうですか。では北陸に似たような店があると聞いたのでそちらを当たってみます」と深々とお辞儀をして男性は去った。去った後、幾つかの疑問が残る。
その1 男性はどうやって私の家を知ったのか。
その2 北陸にある店の存在。
『月歩堂店主の備忘録』より
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