遺体無き殺人 6
進藤部長刑事が大きな手がかりを手に入れた同時期に菅原刑事も有力な聞き込み情報を持ってきました。ここでもう1人の容疑者が登場します。隠亡の渡辺高蔵です。この高蔵、以前伴蔵の交際関係でちらとご紹介しましたが、彼は役場の汚物掃除夫兼火葬夫で俗称隠坊(おんぼう)という仕事をしていました。人嫌いと言ってもいい伴蔵ではありますが、この高蔵とは仲が良かったらしく毎日のようにお互い行き来していました。そんなにも仲が良かった伴蔵が行方知れずであるにも関わらず悲しむ様子が無い。
高蔵は柴田長太と同じく前科があり、窃盗前科4犯で5年7ヶ月収監されていました。また、高蔵は春に役場に火葬夫を辞めたいと願い出て退職していました。辞めても特段仕事の当てもなくブラブラしている。
菅原刑事が不審に思ったのはかつての職場だった火葬場に行きたがらず、どうしても行かねばならない際には必ず母親を連れて行くという点でした。そして、彼はさらに重要な証言を手に入れます。
高蔵が近所の祝い事に招かれた際の話です。祝い事でしたから酒宴が開かれました。高蔵は酒を飲み気分が良くなり
「伴蔵の野郎のことは実にうまくやれたものだ」
とつい口がつるりと滑ってしまいました。
「実にうまくやれた」何をだ?高蔵は何か重要なことを知っているに違いない。菅原刑事はこの手柄を携え急いで赤湯署へ向かいました。