遺体無き殺人 2
捜査開始
4月になっても伴蔵は姿を見せませんでした。伴蔵が行方不明の噂が噂を呼び、いつの間にか
「伴蔵あんにゃは4・500円の現金を持っていたそうだ。金を取られて殺されたに違いない」
と強盗殺人まで話は発展。町中の話題となってしまいます。赤湯署もここまで大きな話になってしまうと捨ててはおけず伴蔵の捜索に踏み切ります。とはいえ警察は捜査当初、伴蔵は商売の取引でどこかに泊まりがけの出張をしているんだろうくらいにしか考えていませんでした。しかし、捜査を進めていくと合点がいかぬ不審な点が発見されます。
警察が伴蔵の家を調べてみると衣類がよそ行きも含めそっくりそのまま残され、米は買ったばかりで少し手をつけた程度でした。この状況から伴蔵が遠くに行ったとは考えにくく、かといって自殺したとも考えられませんでした。また、伴蔵はケチで小金を持っていると噂されるくらいなので借金取りからの請求から逃れるためどこかに姿を隠すなんてことも考えられません。伴蔵がいつから姿を見せなくなったのか。町人からの聞き込みで2月3日までは伴蔵の家から煙が上がっていたが4日からは見えなかったとの証言がありました。
以上の観点から警察は伴蔵が2月3日頃に何者かに殺害され、遺体が人知れず始末されたと推理しました。警察はこれはただならぬ事件かもしれないと思い始め捜査に本腰を入れます。担当は赤湯警察署長手塚利十警部と司法主任高橋恒太郎警部補。2人はまず伴蔵の交際関係から捜査を始めます。