緑に染まる1
私の住んでいる土地は山が多く、5月後半から6月くらいの緑が美しい季節が1年で一番生きていることに喜びを感じます。
私は朝早く起き、庭に咲いたアプリコット色のバラを2・3摘み部屋に飾りました。窓を開けると緑の香りが部屋に満ち、今日が素敵な1日になる予感がします。思わず深呼吸して朝食は何をしようと考えていると電話が鳴りました。
「久し振り」
声の主は緑森さんでした。緑森さんはこの近くの山に代々住んでいる一族で山の緑から「山絵具」を精製できる唯一の人です。電話があったということは絵具ができたに違いません。
「今年も絵具が出来たから取りにおいで」
「わ、ありがとうございます。どうですか今年の出来は」
「今年は春が来るのが早かったからね。上々だよ」
私はすぐに取りに行く旨を緑山さんに伝え、山は寒いからと忠告を受けたので薄手のコートを着て車に乗り込みました。