未完の書ー博美さんの見解ー
「そういえば昔、たまたま扱った紙切れが何かの暗号だったということがあったなぁ」
私の話を聞き終えた博美さんはコーヒーを飲みながら記憶を辿るように眉間にシワを寄せて考え込んでいました。
「ま、私の店での話ではないけどね」
「そうですか。私、気になって仕方ないんです。悪い癖ですよね」
博美さんは笑いながら「わかるわかる」と頷きました。
「私も同じだよ。この仕事を生業にしている人はみんなそうだと思うよ。職業病って言うのかなあ。謎を解き明かしたい衝動に駆られるよね」
私は深く頷きました。やはり博美さんに相談してよかった。心が軽くなりました。
「博美さん、やっぱりこの本が欲しい人に会ってみようと思います」
「そう?でも、聞いた感じでは危ない気もするけど。私が一緒についていこうか?」
「いえ、大丈夫です。一緒に行ってくれそうな人がいますから」
博美さんは「おやおや」と詮索するような目で私を見ていましたが
「じゃあさ、無事話にケリが付いたらまた来て教えてよ」
「もちろんです。今日はありがとうございました」
店を出ると気分が晴れやかになったこともあり、駅まで力強く歩きました。まずは先方に電話して手紙を書こう。そして、暗号ということであれば考えがあります。
切符を買い改札を通りました。下りの電車は2番線です。