月歩堂の商品カタログ

〔№3〕　晴雨洋傘

どうして手紙を書いているといつも雨が降るのだろう。部屋の窓から頬杖をつきながら降る雨を眺めていました。雨を見ていると一向にペンが走りません。書きたいことは山ほどあるのに。

一文字も書けないので休憩してお茶を飲むことにしました。台所で湯を沸かしていると郵便屋さんがポストに郵便物を入れる音がしました。取りに行ってみると久しぶりの月歩堂の商品カタログでした。お茶を淹れワクワクしながら封を開けるといつものように季節の挨拶と商品説明の紙が一枚だけ入っています。

「秋も随分深まって参りました。お客様はいかがお過ごしでしょうか。ワタクシはというと山に分け入りキノコや山ぶどう、アケビなどを採るのに忙しく過ごしております。採れたての秋の味覚は格別ですね。

さて、商品入荷のお知らせです。今回の商品は「晴雨洋傘」と呼ばれるものです。この洋傘の不思議な所は傘を開くと晴れ、閉じると雨が降ります。そうです全く傘の用途をなさないのです。是非、この不思議な体験をお客様御自身で体験していただければと思います。例によって例のごとく商品は１点限りの早い者勝ちでございます。お電話お待ちしております。」