本日は天気雷雨のち風強し4
市の職員に石の場所を伝え終え、電話を切ると私を拉致した男は「御苦労だったな」と労い、永安町まで送ると言った。私は少しイラッとしたが、もう関わり合いたくなかった。男の提案を断り、近江町市場で安い豚コマでも買って帰ろうとぼんやり考えていた。
「おぉーい大野君。本当に私、行かなくてもいいんですか?」
離れの引き戸が開き、月夜さんが手を振った。
「大丈夫です。もう解決しましたから」
「たぶん、たぶんだけど、私が行かないと石は動かないと思いますよ」
は?私はポカンとした。何?何を言っているんだこの人は。
「え、それはどういうことですか?」
「あの石にはまじないが施してあって、簡単には動かせないと思います」
私は溜息をついた。この面倒な事件はまだ続くのか。いい加減、終わりにしたいよ…。私は拉致した男に目配せした。男は頷き「今、車を出す。乗ってくれ」と車まで走っていった。
「月夜さん。お忙しいと思いますが、ご足労いただけますか?」
「しょうがないですね。もちろんですよ」
月夜さんは、なんだかよくわからない鼻歌を歌いながら下駄をカラコロ鳴らし踊るように歩いて来た。
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