玉川図書館地下分館-金沢小風景⑥-

金沢市立玉川図書館の地下には一部の市民にしか知られていない分館があるのをご存知だろうか。年に数回、選ばれた金沢市民にのみ入ることを許される分館である。この分館に入ることを許された市民は一様に「観れてよかった」と感嘆の言葉を漏らす。応募するには市報の片隅に小さく掲載される募集に応募し、市役所の秘密図書館課の審査をクリアしなければならない(主に調べられるのは図書館の利用回数と貸出し図書の延滞の有無である)。

私は偶然、市報を見ていたらこの募集を発見し、応募すると運よく合格することができた。指定された日時に図書館に向かうと図書館司書と屈強な警備員2名が待ち構えていた。私は挨拶し、身分証を見せると警備室へ案内され厳しいボディチェックと持ち物のX線検査が行われた。問題無いことがわかると司書が「こちらへどうぞ」と図書館にある中庭へ案内された。司書は美人に違いなかったが氷のように冷たい雰囲気で凍え死になった。司書は中庭の赤レンガの1つを取り外しレンガの下にあった持ち手を思い切り引き上げた。ズルズルと音がしたかと思うと地下への階段が現れた。私たちは地下へ降りる。

「この分館は戦時中、米軍の攻撃から貴重な図書を守る為作られました」

階段を下りながら冷たい司書が手短に説明した。私は「へぇ」とか「ほぉ」とか相槌を打ちなんとか司書と打ち解けようとしたが、氷のように冷たい視線で凍らされた。階段を下りきると古い扉があり、司書が開けると黴臭い匂いが鼻を突いた。

「利用時間は1時間です。メモ、写真撮影等は禁止。それと…この分館で知り得たことはインプットはできますがアウトプットはできません。話そうとしても言語中枢に鍵がかかり話すことができませんのでご了承ください」

そういうと司書は1時間後にまた来ますと言い扉を閉めた。それから1時間、私は至福の時間を堪能した。蔵書の数々は素晴らしいの一言でページをめくるたびに溜息が漏れた。ここで記すことが出来ないのが残念でならない。

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