金城月夜の証言

東山の茶屋街から少し離れた所に豪邸が1軒ある。豪邸には離れがあり、そこには占いで有名な金城月夜という女性が住んでいる。

茂庭草介がその離れを訪ねると金城月夜はあきらかに嫌な顔をした。何しに来たのか聞かれたのでコレコレこういうことでして…と説明すると

「私、今、忙しいのですよ。下半期の占いをしなければいけないのです」

「はぁ…それでは1つだけお聞きしたいのですが」

「何でしょう」

「何故、あの時、大野陽太君を呼んだのでしょうか。一通り話を聞くと特別、彼が重要な役割を果たしているとは思わないのですが…」

金城月夜は残念な人間を見ているかのように溜息をついた。

「あのねぇ、貴方、恋人とかいないでしょう」

「あ、はい。よくわかりますね。流石です」

「乙女心を理解してからお越しください。それではさようなら」

そう言われると茂庭草介の思考は一瞬止まった。再び動き出すといつの間にか離れの外にいた。不思議に思い、もう一度離れの引き戸を開けようとするが戸が重くて全く動かない。仕方ないのでその場を後にした。

茂庭草介は始末書に「原因・乙女心」とだけ書いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?