本日は天気晴朗なり3

荒れた天気は全く好転しない。ついに浅野川の緋鯉が龍になり空を飛び出した。もう、行政は誤魔化しができない。週明け市長が釈明会見を行うことが決まった。今日は土曜日だから月曜までにこの問題を解決し、無かったことにするしかない。取り敢えず、龍は市の観光PRのための風船ということにした。

金城月夜からの連絡は未だ無い。丸澤圭一郎はストレスで胃がねじ切れる寸前だった。電話連絡しても一向に繋がらない。どうするんだこれは。公務員は土日休みだが、休めるはずがない。取り敢えず市役所で待機しているとファックスが流れてきた。金城月夜からだった。

「金沢市役所 市民生活課 丸澤圭一郎様」

丸澤圭一郎は達筆な筆字で書かれたファックス紙を食い入るように読んだ。

「荒れた天気の原因がわかりました。簡単なことです。でも、教えるのは大野陽太だけです。陽太君を読んで来てください」

……大野陽太って誰だよ!丸澤は思わず叫んだ。全く心当たりがない。こうなったら仕方ない。本来なら課長の決済の判子が必要だが、緊急事態だ。丸澤圭一郎は受話器を取って「内線003」に掛けた。「内線003」は加賀尋ね人探索方に繋がる。この秘密部署は江戸時代から続く加賀藩領内で行方不明者を手段を選ばず迅速に探し当てる超法規的集団である。

「…はい。加賀尋ね人探索方」

「市民生活課の丸澤です。人を探しをお願いします」

「…それは金沢市内ですか。市外ですか?」

「いや、ちょっと、わからないです」

「そうですか。では尋ね人の名前をどうぞ」

「大野陽太。大野陽太を探してください」

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