江國香織「いくつもの週末」
久しぶりに読了本の感想noteを書こうと思う。
最近読んで、ずっと記憶に残っているのが、江國香織さんの「いくつもの週末」。
何編かに分かれたエッセイになっているが、私が特に気に入っているのは、旦那さんとの週末について書かれた部分だ。
好きなものをいくつか紹介しようと思う。
甘やかされるということについて
まずは、前述の題で書かれた一編。
江國さんは、旦那さんとの生活を、つまりいわゆる結婚という形を選んだことについて、「甘やかされる」という言葉を使って語っている。
結婚したからには、正しいか正しくないかなんてどうでも良くて、
お互いにひたすら甘やかし、甘やかされることによって、
結婚ということに意味がもたらされる、ということのようだった。
江國さんにとって、お互いがいてもいなくてもやっていける2人組は、同じ家に住む必要がない、隣同士に住んでおけということなのだ(そこまでは言っていないかもしれないが)。
私はこの文章が特に気に入っている。
別にひとりでも生きていける人間が、せっかくふたりで生きていくことを選んだのだから、それならばどっぷりと浸かってしまおうという考え方が、美しいと思った。
何よりも、「依存」について肯定的に語ってくれた江國さんが、好きだと思った。
この本によると、江國さんの旦那さんは自分で水を飲まず、飲みたくなったら江國さんに「水」、と言うらしい(そして持って来させる)。
X(旧Twitter)で見かけたら「うちの旦那は本当に家では役に立たない」のような書き方をされているだろうという気もしなくはないが、
江國さんはすごく愛おしそうに、甘えん坊なの夫は、というようにこれを書いた。
そういう考え方ができるような、旦那さんとの関係性を、羨ましく思った。
キープレフト
もうひとつ気に入っているのは、「キープレフト」と題した一編。
こちらは、今まで江國さんの作品を沢山読んできた私が、ひとりの女性としての「江國香織」を感じることができた一編だ。
これを読んで、江國さんの女性としての一面を見てしまった!と思った。可愛すぎる。
意地を張ってしまったあとに、やっぱり甘えたくなる江國さん。自分にとっての落ち着いたところに、戻りたくなる江國さん。
ベッドで眠るのが落ち着くんじゃなくて、好きな人の隣で眠るのが落ち着くんだろうなあ。
RELISH
次は、こちら。この一編で、江國さんが旦那さんをどう思っているかが分かる。
“devil's food”--文中で説明されるこの言葉は、「分かっているのに避けられない飲食物」のことを指す、つまり、アルコール中毒者にとっての「アルコール」のようなものらしい。
江國さんにとっての“devil's food”は「アイスクリーム」と書かれており、そのあとはこう続いている。
江國さんにとって旦那さんは、分かっているのに避けられず、でも、それなしで生きていこうとは思わない、みたいな人。
そんな人に会えるなんて、なんて幸せなんだろう。
私にとっての“devil's food”は、きっとカフェラテ。
私にとっての“devil's person”は、誰なんだろうなあ。
週末を振り返る
江國さんにとっての、「いくつもの週末」を垣間見ることができた。
少しだけ覗かせてもらって、なんだかとても、素敵な気持ちになった。
私にとっての、「いくつもの週末」ってなんだろう?
独身20代の週末って、どんな感じ?
ひとりで庭の植物を愛でたり小説を読んだりする、他愛もない週末。
夜に集まって朝までノンアルコールで音楽を聴いて、お疲れ様でしたと言って始発で帰る週末。
体調不良でドタキャンをして、ベッドの上で泣きながらひたすら眠ろうとする週末。
昼過ぎまで眠り続けて、私から解放された好きな人がお昼ご飯をつくる音で目が覚める、かつての週末。
私も、いろんな週末を持っているし、持っていた。
皆にも思い付く週末があるだろう。
悲しい週末も、嬉しい週末も、それぞれの心に残り続ける。
皆にもいつか、少し教えてもらいたい。
今日のうた
あとがき
どこもかしこも、桃や桜や芝桜、木蓮、ミモザ。綺麗ですね。
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