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小説家の作り方 読書感想文

 いいや、紫依代へのラブレターと言って差し支えないね(?)

 先日、[映] アムリタを読んでから野崎まど作品を読み続けている。
 舞面真面とお面の女、死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~と続けて読み、もちろん小説家の作り方も読んだ。野崎まどの作品は展開がおおよそ読めるのに面白い。キャラのノリが自分の感性にジャストミートしていて、テンポがよくて、きっと真相はこうなのだろうなという予想を裏切らないのに驚かせ、わくわくさせる。

 小説家の作り方もその例に漏れない。
 タグをつけているので承知の上とは思うけれど、念のためもう一度、本記事では小説家の作り方の盛大なネタバレを含む点を喚起しておく。また、本注意を書いている時点では何を書くか決まっていないが、もしかしたらその他の野崎まど作品のネタバレにも触れるかもしれないので重ねて注意願いたい。

 さて、小説家の作り方のヒロイン……まぁヒロインと言って差し支えないだろう。ヒロインの「紫依代」という名前はそのまま読めば「むらさき よりしろ」である(送り仮名がないので「よりしろ」にはならないかもだけど)。小説を書きたいというので苗字は紫式部あたりから持ってきたのかもしれない(今気が付いたが在原露の苗字も光源氏からきているのか)。
 とかく、名前からして紫依代は依り代感がめちゃくちゃ強い。まして、舞面真面とお面の女の面しかり、死なない生徒殺人事件の識別しかり、さらに言えばアムリタの二見しかり、散々超常的といえる存在あるいは方法で依り代を動かし、読者を翻弄、楽しませてきた野崎まどのことなので、紫依代もその例に漏れないのだろうと想像するのは当然の帰納だと思う。
 物語の終盤に差し掛かったころ、やはり紫依代は物実に小説の書き方を教わろうとした本人ではなく、物実に小説を教わろうとしたむらさきの依り代であることが明かされるわけだが、それでは整合がつかないことに読者は気づく。ヘッドセットでやり取りをするにしては物実と接しているときの紫依代があまりにもむらさき然としすぎていると。
 ヘッドセットで聞いた内容を反復するだけならまだしも、表情なども含めて伝え、それを表現するのは無理がある。
 いや、それも識別組子を知った我々読者からすればさもありなんと思えるのかもしれないが、それにしたってアルバイトで雇った女子大生が一朝一夕でできることではないだろう。
 ましてや、ちょっと悪い男子学生にギャップを与えようと考えて「下半身が馬」という面白すぎる回答を真顔で伝えるなんて芸当ができるだろうか。私にはできる気がしない。笑いをこらえるあまり奇妙に顔をゆがませること必至である。駅のホームで実際にそうであったように。

 そんなこんなで結局AI MURASAKIことむらさきさんは、Answer, answerもとい在原露の手によってインターネットから隔絶され、物実の小説執筆教室も終わりを迎えた。
 私は悲しかった。
 目を輝かせ、3時間の末に「なめらか」の四文字を書いた紫さんと、ミニストップでソフトクリームを目前に早く食べたほうがいいのだという蘊蓄とソフトクリームを垂れ流した紫さんと、学祭でライオンに連れられながら知識で勝ち、経験に負けた紫さんと、もう会えないのかと。
 結末としてはそんなことなくて、紫さんはちゃんとむらさきさんだったし、小説執筆教室はこれからも続くのだけれど。
 とかくそこまでの話を通して、私はすっかり紫さんを好きになっていた。

 ここまでとりとめもなく長々と何やらわからないことを書いているが、あともう二つ、触れたいことがある。文章構成と着地が下手なのは許してほしい。私は物書きではないので。
 ひとつ目はむらさきさんが執筆した小説の内容について。
 もうひとつは紫さんの魅力についてだ。

 まず、むらさきさん曰く、この世で一番面白い小説は箇条書きのメモを見せた時点で周囲の人間を狂わせたという。
 我々はこの事象に身に覚えがある。
 [映] アムリタでは最原最早の書いた絵コンテ、もっと言えば彼女の作る作品全般がそうであったし、死なない生徒殺人事件では識別組子の描いた四角形と五角形の間の図形、あるいは天名珠の描いた三角形と四角形の間の図形もそれに近いものなのだろう。
 いずれも人間の感覚を超越したひとつ上の次元、アムリタで言えば神の、生徒殺人事件で言えば不死者の所業であることを考えると、在原露の作り出したAIむらさきさんは人間より少し賢いどころの騒ぎではなく、あくまで小説という一分野においてのみかもしれないが人間の次元を超越している存在なのだということは想像に難くない。
 その彼女が書く人間の理解できる次元に落として書くこの世で一番面白い小説は、果たしてこの世で一番面白くなれるのだろうか。
 それはきっと、これから物実と二人で協力して末永く挑戦していくに違いない。

 次に、紫さんの魅力について。私はどうもこういうキャラクターに弱い。世間ずれした面白美少女というかなんというか。恐らくブルーアーカイブの調月リオも同じジャンルのキャラクターだと思うのだが、彼女たちのどこに惹かれていて、なぜ好きなのかという部分を言語化できない。
 もちろん快活な女性だって好きだ。例えば本書の付白デスクだって愛らしくて好きだ。でも紫依代や調月リオに対する好きとはベクトルが違うというかなんというか。なんだろうね(知らねぇよ)。
 とりあえず現時点でパッと思いつく二人の共通点を見出してみると、卓越した知識を持つということ。社会性の欠如により知識があるにもかかわらず世間ずれしているということ。一見鉄仮面のように見えてめちゃくちゃ人間らしいところ。
 ふむ。要は卓越した存在に振り回されつつ頼られたいということか?イマイチわからないが私の癖がややゆがんでいるということだけがなんとなくわかってしまった。つらい。
 でもほっとけない女の子なんてみんな好きだし、賢い女の子だって好きじゃあないか。その両方の性質を兼ね備えたハイブリッド女の子なんて嫌いなわけないんだ。みんなそうだろうそうに違いない。

 とにかく、要約すると紫依代は可愛いし、野崎まどの小説は面白いということ。要約できてない?じゃあAIにでも頼めばいいだろううるさいな(逆切れ)。

以上。

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