小麦を脱穀する
脱殼機をどこから調達するか。これが今回の一番の難関だった。今はまだ詳しく書くのはやめておくけれど、あちこち探してなんとかギリギリのタイミングで農具を貸してくれる人が現れた。1年間近く探し続けていたので半ば諦めて不貞腐れていたのだが、世の中まだまだ捨てたもんじゃないな、と自分の思い通りにならないとすぐスネて世を呪う甘えん坊根性を反省する。
【脱穀】穀物の粒を穂から取り離すこと
麦を穂から外す。たったこれだけのこと。だが大量の麦を処理しようとすると恐ろしいほど労力と時間がかかる。そのあたりの話はこちらに。https://note.com/pacific_islands/n/ne9999644e9dd
昔の農具を使う脱穀と、コンバイン(穀物の収穫・脱穀・選別をする農業機械)でのそれとは労力が大きく違う。例えば1000枚のシーツを全自動洗濯乾燥機で仕上げるのと、洗濯板と粉石けんで手洗いして絞って天日干しで乾燥させるのと同じくらい違う。
「後家倒し」との異名を持つ農具、センバコキ
《後家の賃仕事である稲こきを取り上げる意から》千把扱き(読み:センバコキ「千歯こき」表記もあり)の異称。
中世の拷問具のようなルックスの「せんばこき」という農具。鉄の櫛のような部分だけで販売し、台は自作するものだったようだ。私は明治時代のセンバコキをメルカリで購入。台はイケア。畑に置くと(芸術作品の)インスタレーションみたいで気に入っている。これが登場する前は後家さん(未亡人)などが竹に切れ目を入れた簡素な農具に穂を通して麦の実を外していたようだ。後家倒しとはなんて残酷なネーミングなんだろう。テクノロジーの進化や社会の変化によって消えていく仕事というものはいつの時代にもある。
足踏み脱殼機
足踏み脱殼機は慣れてきて上手く捌けるようになってくると、ドラムが回転するスピード感と麦粒がバリバリっと音を立てて穂から剥がれる感覚がだんだん面白くなってくる。意外にも父がブツブツと文句を言いながらも楽しそうに脱穀していた姿を私は見逃さなかった。
くるり棒
これは簡単そうに見えて扱いが難しい。小平にも民謡「棒打ち唄」は残っており、このくるり棒で脱穀する時の作業唄だが、唄うどころか回すのだけでも一苦労。慣れが必要のようだ。
唐箕(とうみ)
穂からはずしたあと、風力を起こして麦を殻・麦・チリなどに選別するための農具。
これらを使っての脱穀作業は予想外の通年より早い真夏日の到来により、午前10時には30度近くまで気温が上がり熱中症への危険が高い日々が続いたため、仕方なく早朝5時スタートで作業したり曇りの日を選んで作業したりと、なかなか一度には終わらなかった。