「松皮餅」(秋田県由利本荘市鳥海町)
原材料:餅米(秋田県産)、小豆、砂糖、食塩、松皮、片栗粉/重曹
製造:みつば会
販売:ほっといん鳥海
https://ktmhp.com/hp/hotin-chokai/5/detail-594
コロナウイルスでの自粛要請が段階的に解除された2020年5月東京。このウイルスは現時点では新型すぎて、まだ薬もなければワクチンもない。治療方法がなければ、頼れるのは自分の体の免疫力だけだ。
それでいろいろと身体に良い食品を探したところ、「松」はさまざな栄養を含んでいるので昔から重宝されていたんだとか。
松といえば日本庭園の植栽や盆栽、雑木林の松ぼっくり、海岸の防風のための松林、お正月のしめ飾りなどがイメージできるが、食用となると松の実くらいしか浮かんでこない。それも和食ではなくてイタリア料理のジェノベーゼとか韓国料理の参鶏湯とかだ。
そんなに身体に良いものなら、料理という形で今の時代にも残っているのではないか?
どこかの地方の郷土料理として、密かに今現在でも食べられているのではないだろうか?
そこで調べてみたところ、
ーーー『日本大百科全書』【マツ】の項目によると、「江戸時代の飢饉(ききん)のおりには、松皮を搗(つ)き、松皮餅(もち)をつくって食べた」。
「松皮餅」という食べ物があったのだ。
起源は諸説あって武士たちの兵糧攻めのときの食べ物とのいい伝えもあり、定かではないそうだ。また今では、秋田県由利本荘市鳥海地域ではお祝いのもちとして五穀豊穣を祈る行事の中で伝えられている。
「松皮餅」がめちゃくちゃ気になって仕方がなくなってきた。さっそくお取り寄せしてみた。
食べてみた感想は、基本的にシンプルな大福。東京の和菓子屋に売られていても不思議じゃない、一般的に受け入れられそうな上品な味。餅に松皮が練り込まれているが、餅の食感がちょっと独特。ボンタンアメみたいな、もちもちだけどあまりのびない、ほんのりと甘い生地。そして言われなければ分からないくらいの、ほんのわずかに香る、ウッディな香り(ヒノキみたいな)。中の餡は甘さ控えめのこしあん。
飢饉の時の救荒食だったというのも、これからの世界的な気候変動を考えると興味深いし、なにかヒントになりそうな予感もする。松は食べられる、という知識がひょっとして私たちを救うことになるかもしれない…なんて妄想はふくらむけれど、この松皮を食べられるようにするための下ごしらえは大変な時間と労力を要するそうだ。アカマツの薄皮を丁寧に剥ぎ取り長時間煮てアク抜きをし、はぎ取った繊維を柔らかくなるまでナタなどで叩き、餅に練り込む。覚えておこう。
松を食べて免疫力がアップしたかどうかはわからないけど、飢饉の時には松を食べよう、と心に決めた。