新年とマイコンのR2-D2
年末年始は毎日散歩して過ごしてたんだけど、2回ほど公園でラジコンを走らせて遊ぶ親子の姿を見かけました。
で、ふっと思い出したのが子どもの頃にマイコンのR2-D2を買ってもらったこと。あれは1978年か、それとも79年かな。
「ラジコンはスピード出るから、ぶつけたらすぐ壊れるぞ」
ラジコンは当時結構値の張るおもちゃで、そうそう簡単に買ってもらえるものではなかった。少なくともうちはマイルドに貧乏な家だったので、感覚としてはクリスマスか誕生日でプレゼントしてもらえればかなりラッキー。でもほとんどの場合「今度のお年玉は半分でいいから! だからおーねーがーいーー!!」とか拝み倒して、クリスマスとお年玉の合わせ技として手に入れる感じだったと思う。
「ぶつけたらすぐ壊れるぞ」は、近所のおもちゃ屋のラジコン売り場で値段を見た親父が、ちょっと想定以上のそれにビビって言った言葉だったのかもしれない。でもたしかにその通りだった。それまでに何度か貸してもらって走らせてみたことはあったが、正直思うように操作できなかった。危うく壊しそうになったこともあった気がする。
そしてそう言われてみて考えれば、おれの周りの「いつメン」たちの中にはすでに「ラジコン名人」も少なくなく、ガキ大将的な存在だったおれとしては、せっかく買ったのにやつらにまったく追いつけず、遊ぶたびに醜態を晒す姿はちょっとした恐怖だった。
それにそもそも、この数カ月、ラジコンを買ってもらえなかったおれは、「別にラジコンなんて欲しくないもんね〜だ」というていで日々を過ごしていたんだった。とは言え、やっぱり欲しいよラジコン…。
ふと目線を横にずらすと、そこには当時社会現象的に盛り上がりを見せはじめていたスターウォーズの人気キャラR2-D2がいた。ときどき首をギュイーンギュイーンと回してピコピコ言うロボットだ。
小学生のおれたちの間ではまだそこまで人気じゃなくて、どっちかと言えばコロコロコミックに載ってたドラえもんとかの方が人気だったけど、そこはむしろおれにはチャンスだった。
「お前らスターウォーズの方がすごいんだぞ。R2-D2が一番人気なんだぞ」って。
でも、「マイコン」ってなんだろう?
R2-D2の入った箱の横には、おもちゃ屋さんが書いたと思われる「ラジコンよりも先を行く話題のマイコン!!」「コントロールは電源ONで完了!」みたいなことが書かれていた。そう言えばちょっと前に、月刊マイコンとかって雑誌も売り出され初めてたっけ。ラジコンよりすごいのか。ちょうどいい、「お前ら知らないのか。ラジコンよりマイコンの方がすごいんだぞ!」って。
家に帰り、電池をセットしてさっそく電源ON。
…動かない…。そうかそうか。絨毯の上じゃローラーが回りづらいよな。畳ならきっと大丈夫だ。あっちでやろう。
動いた。ゆっくり前に進んだと思ったら右に曲がり、止まったと思ったらピコピコ言って首をぐるぐる回した。
また前に進んだ。曲がった。止まった。ピコピコ。ぐるぐる。進んだ。止まった。ピコピコ。進んだ…。ラジコンじゃないからなにも操作しなくていい。いや、なにも操作できない…。できるのは電源ONOFFだけだ。
親父が「嬉しいか?」って聞いてきた。
もちろん嬉しいに決まってる。だってクリスマスとお年玉を合わせて買ってもらっただよ? 嬉しくなかったら悲しすぎるし、自分が可哀想すぎるじゃないか。
もちろん嬉しいに決まってる。
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