記憶の入浴剤
私の中には水分がある
それは並々と。
頭の中には記憶がある
それは数、数多に。
頭にあったものが
こころに転がり落ちたとき
幾つもの泡があそび
水の中ではじけていく。
幼少期、入浴剤が
溶けて無くなるのが嫌で
遊びを見届けたあと、
入浴剤の欠片を袋に入れて保存した。
その後はどうしたかすら憶えてないけれど。
記憶が溶けていく。
霧がかった頭の中で
靄がかった心の中で
何がどうしたのか、わけ分からず。
善くないことだけをひしひしと感じながら
溶けていく虚しさだけを抱き抱えて
水に色を加え、形を隠す
ぬるま湯の居心地の良さに目蓋も重く
私も溶けていくのか。
虚しさを抱き抱えて。
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