介護保険は日本最大のサブスクリプションかもしれない④
ここまで3回に分けて介護保険とサブスクを紐解いてきました。
今回は、介護保険がサブスクとして考えた時の問題点について話をしていこうと思います。制度的な話ではなく、現場で使える話にしていきますので、メモのご準備を!
これまでの話が読みたい方はこちら!
僕が介護保険をサブスクとして捉えるに当たって思う課題は大きく3つ。
・購入のタイミング
・サービスのあり方
・サービス選択の自由
この3点です。
まずは、サービス購入のタイミングについてですが、
介護保険を利用するに当たって、初めてのサービス購入はいつから始まるか皆さんはご存知でしょうか?
それは、ケアマネさんにケアプランの作成を頼んだ時です。
ケアマネージャーによるケアプランの作成は、実は自分でもできるものです。しかし、専門家にお願いしないと何を利用していいのかわかりません。なので、ケアプランの立案をお願いします。
この時にケアプラン内に利用するサービスが並べられます。このサービスについては利用前に、利用者と話し合った上で、必要なサービスを選択していきますが、この時点ではまだ料金は発生していません。
ちなみに、ケアプラン作って関係各所に連絡とって、やっぱり利用辞めました!ということになったらケアマネは請求できないので、正確にいうと作成を頼んだ時というより、利用を開始した時ですね。
実際、このようにお願いしたにもかかわらず、利用せずにタダ働きでした。みたいなことは現場では往々にしてあることです。ですが、ここは一旦スルーでいきます。
さて、ケアプランの作成の時に仕事をしているのは誰でしょうか?
そう、ケアマネですね。しかし、ここでは費用は発生していません。そして、利用者も保険でやってくれている、または公的なサービスだと思っていることがほとんどです。
ここが大きな間違いですが、医療介護の人は公的機関ではなく、あくまでも民間の事業者です。ということは、収益になることをやらなければお給料にはつながりません。なので、ケアプランの作成からお金の話をする必要があります。
まぁ他の業種でいう、見積もりは無料です。と一緒ですね。これを伝えておかなければなりません。もし、見積もり有料ならもっと真剣に考えるでしょう。
さて、前置きが長くなりましたが、ここからが購入のタイミングです。
ケアプランを立てて、介護保険サービスを利用することになりました。もちろん見学、などがある時もありますが、訪問のサービスはほぼ決定の上でスタートします。むしろ、訪問サービスを1回のお試しで全てわかることなんて不可能なので、サービス利用から始まってしまうのは致し方ないでしょう。
さて、ここで利用者の心理としては、
「介護のことはわからないから専門家に任せよう。利用料といっても1割負担だから、とりあえずやってみたらいいかな」みたいな気持ちです。
つまり、この時の気持ちは皆さんがサブスクでイメージするところとよく似てるんですね。最も違うのは自分で選んでいるか、紹介されているかという点です。
ここポイントなので覚えていてください!
介護というサービスは必要だけど、何を選んでいいかわからないからおすすめに任せました。という場合と、
介護が必要で、このようなサービスが欲しいと思ってるけど、事業所でどこがおすすめかわからないから選んでもらった。
では、心理的に全く違います。
要はパソコン欲しいけど、MacかWindowsかどちらがいいかわからないから選んでもらった。という状態が普通で、
ITの仕事をすることになったから、とりあえず必要最低限のものをおまかせで!というのでは心理的な依存度が違いますよね?
この時点で、まず利用者はやや負い目を感じながら利用が開始されています。
次に、サービスのあり方です。
先程の、おんぶに抱っこ状態でよくわからんけど、良いよって言われたから利用することになった利用者さんに対して、サービス提供者はどのように関わるでしょうか?
例えば利用者から
このデイサービスの特徴は?
このサービスの強みは?
他者との違いは?
と聞かれた時に、皆さんはなんて答えるでしょうか?
はい、もうお気づきですね。
このような質問を投げかけてくる人に対して、サービス提供者は
「厄介な利用者」というレッテルを貼ります。
しかも、ベースに認知症があって、このような質問を何度も聞いてこられたらいかがでしょうか?
とにかく、黙っていうこと聞いてくれないかな。みたいな気持ちになっていませんか?
でもね、これおかしいと思うんですよ。
だって、利用してから向き不向きを考えましょう。と言われて入ってきて、いざ利用してみたら質問になかなか答えてくれない状況で、とりあえずみんなおんなじようなことしてるから、それに合わせておこう。
だって、ケアマネさんがおすすめしてくれたから
って、気持ちになってるんですよね。
さて、この利用者を裏切っているのは、誰でしょうね?
これが他業種なら、相見積もり取られた上で、A社はこの金額でこのプランだったけど、おたくは何が違うのかね?って嫌になる程、聞いてきます。
いや、むしろ聞いてこられた方が良いですよね。検討の余地ありですし、聞いてこずに利用されないことなんて山ほどあるわけですしね。
そこをぶっ飛ばして、いきなりサービス提供から始められるんですよ。そんなん最高じゃないですか。自分の出したサービスを受けてもらって、それの是非を問えるわけなので。
じゃあ、その意識で現場スタッフは対応しているでしょうか?
これが、サービスのあり方です。
最後に、サービス選択の自由、です。
これはケアプランの段階で専門家にお任せモードなら、なかなかに変えられないという気持ちになってしまいます。
そこを一旦抜きに考えても、利用者のサービス利用に対しての拒否発言に皆さんはどう答えていますか?
よく、認知症の人が、「あのデイにはいきたくない」や「リハビリにこられても運動なんかやりたくない」って言われているの聞いたことはないでしょうか?
これ、皆さんはどうやって返答していますか?
「そう言わずにいきましょうよ〜」とか
「リハビリジャなくて、とりあえず散歩いっておきましょ」みたいな感じではぐらかしてませんか?
先にお伝えしておきますが、はぐらかすのがダメ、なんではなくて、毎回同じように言われているのにも関わらず、毎回同じ方法ではぐらかせながら行動させてたらダメだということです。
認知症の方は長期記憶が苦手な人が多いです。つまり、今日の対応を明日覚えてないことはあるでしょう。
しかし、不快な感情というものは、なんとなくもやっと覚えてるもんなんですね。これは、脳の扁桃体という部位が情動に深く結びついているからです。しかも、人は優先的に不快感情を記憶することになっています。
これは、生物的にも安全より、危険を覚えなければ命を守れないから、というメカニズムの元そうなっているんですね。
ということは、昨日の不快感情ではぐらかされたやりとりは覚えていなくても、その時感じた感情はなんとなく記憶されてます。これが起きると、顔をみた時になんとなく嫌な人だなぁとなるわけです。
こんな形で負の強化学習が始まってるわけですが、サービス利用を変更しようと思っても、まぁなかなか変わることはありません。利用者が言いにくい。というところが主でしょう。
しかし、サブスクモデルは利用者をいかに離脱させないかがキーのビジネスモデルです。
この不快感情を、「もっとサービスを受けたい!」と思ってもらうために、現場はどう考えていけば良いのでしょうか?
次回は、この問題提起に対して、藤田からの提案を発表しますね!
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