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最終面接

ぽーん、ぽーん

単調なリズムが寂しげに続く。新潟駅の改札付近を歩いていたらなんとなく息がしづらくなり、嗚咽と共に周りに誰もいないことをいいことに涙が止まらなくなった。

県の中心であるのにしょぼいと幼い頃からどこかで馬鹿にしていた、あの寂しさの塊の光景がより今の感情に火に油を注いだ。

息をするようにカメラを構え、写真を撮った。

夜、狂ったように撮った渋谷のごちゃごちゃきらきらとしたものと当たり前に別世界が映る。
まるで世界の終わりのような静けさ。
いつもは嫌になるこの静けさも、閉塞感も、
たった一日空いただけにも関わらず懐かしく心地の良いものだった。

昨日、私はミスiD2022最終面接へいってきた。
このご時世、しかも東京までは遠方とされるこの土地でオンラインとも迷ったが、未だに自分が残っていることをたとえ何かの間違いだとしても、実際に見に行ってしまいたいというわがままで私は東京へ向かった。

最終面接で話したこと、言われたことを全てここで書いてしまうと私の秘密主義的なものが壊れてしまうと思うので、あまり事細かには書けないが、私の主観で感じたことをここから記しておこう。


私は去年、いやむしろずっと前から東京に対して憧れあった。それと同時に昇華しきれないある種嫉妬のような感情も含んでいた。

高卒し、進学する上で上京したいという気持ちも普通の人の何倍かもあった。

しかし、それは叶わなかった。

私はまた、呪いをかけた。

「ここからでることはできない」

狭い世界で小さな家の窮屈な一部屋で、生まれた時からどこか息苦しく生きてきた。

自分を守るために何度も呪いをかけていった。

しかし、それを解くのは呪いをかけるよりも何倍も難しかった。

他人から自分を決めつけられる呪いよりも、自身で自分を制限してしまう呪いの方が厄介である他がない。

しかし、昨日私はその呪いから解放されたのだ。

私のめざしている道は東京就職がほとんどだ。
だからこそ今東京に行けなくても、いずれ行ける。わざわざ一年生であるこのタイミングで行く意味が分からないと思う人もいるかもしれない。

けれども、私は今、このタイミングで自らの意思で選択し、今までの経験やあの時言えなかったこと、上手く愛することができなかった人達への思いを形にした作品の力を借りて、このミスID2022でファイナリストに選ばれたことに意味があると思う。

最終面接の後、スタッフさんの一人が私の作品を見て、すぐにとある女性映画監督さんの名前が頭に浮かんだと話しかけてきて下さった。

その女性監督さんの名前が上がったことに少しびっくりした。小林司さんも最終面接の時にその女性監督さんの名前を上げていた。
私はその人の作品が好きでよく見ていたが作品を作る上ではあまり意識はしたことがなかったので意外だと思った。

言われたことに対してはすごく嬉しかったのだが、私はまだ、自分の作品に対して自信がまだ持てていないし、自分から言うのはおこがましいと思うのでその女性監督さんの名前はあえてここには書かないことにする。

最終面接に関しては、映像を映すためのHDMIケーブルが最初上手く接続されずに焦ってしまったり、人の目も上手く見れない私は、震えが止まらない声の中で頑張って選考委員を見つめようとして、まるで睨みつけているように映ったかもしれない。ダサくてカッコ悪くて、そして大層不気味だったと思う。

それでも私は、小学校から中学校、高校、それよりもずっと前から抱えていた、親にも話せない、一種の呪いを話して、解くことが出来たと思う。


最終面接の後は、同じくミスiD2022の霧勿レレちゃんと夜行バスの時間まで過ごした。
直接会うのは初めてだったが、本当にすごく生き方も綺麗で、面白くて最高の女の子だった。
初めてとは思えないくらい、映画のことについてはもちろん、私の学校のこと、レレちゃんの大学のこと、ミスiDのこと...本当に色んなことを語って、写真もたくさん撮れたのでとても幸せだった。

新潟から東京へ行く夜行バスの中で私は最終面接への緊張からか、最後列の激しい揺れからか、一睡も出来なかった。

いわば、オール状態で最終面接にのぞんだ。

しかし帰りは完全熟睡とまでいかなくても、浅い眠りを何度も繰り返すことは出来た。

高速道路が雪により通行止めになったため私の乗っているバスは大幅に遅れるとアナウンスがあったが実際は20分遅れただけで新潟駅に着いた。

東京も寒いと思ったが、やはり新潟も寒い。

改札へ向かう。突然の孤独、駅の寂しげなBGM。

上手く息が吸えない。いろんな感情が滲む。
言葉で説明できない何かが溢れるのではなく滲んだ。じわじわ、じわじわと私の中を蝕んでいく。
耐えきれなくなって私は泣いた。

冷たい外気を吸う度に目から暖かいものが溢れては外気に触れて冷たくなっていった。







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