生きてるって感じたい
あれもこれもそれも全部、私ではない誰かに向けたものという事実が虚しさを倍増させる。
太陽は眩しすぎて気が滅入るし、どこまでも続く空はとても窮屈だ。
鳥達の囀りは、何処へも飛んでいけない私を嘲笑うかのように聞こえる。
貴方には、伝わるかしら。鮮やかな世界に取り残されたモノクロームの傷痕と痛みが。
枯れたいのに枯れることを許されないプリザーブドフラワー。日向なんて好きじゃないのに、盆栽の見栄えの為だけに植えられた苔。空気の美味しい湖の中にいたのに、小瓶に詰められ汚い街へと意図せず送り出された毬藻。
そのどれもが、健気に笑って美しさを競い合う。付けられた傷痕や痛みを必死に隠し走り続ける。息が切れても、血を吐いても、誰にも悟られてはいけないのだ。
笑顔を貼り付け、無理矢理にでも目を覚まし、夜が来ないことを願い歩みを進め、明日が来なければ良いと泣きじゃくり目蓋を閉じる。
その繰り返しの日々が如何に過酷なものか。
貴方にはきっとわからないのでしょうね。
やる気が出なくてもやっていれば湧いてくるなんて言葉、よく言われるけれど、何の足しにもなりゃしない。
泣きたい時は泣けばいいなんて言うけど、何の救いにもなりゃしない。
ただ私たちに必要なのは、曖昧に笑い、正しい答えを言わない狡い人間か。或いは、守りもしない約束をいくつも誓っては消えていく...そんな無責任な酒飲みか。
自分本位な優しささえも持ち合わせておらず、やり場の無い気持ちを手当たり次第ぶつけ、築き上げたものをぶち壊していく事でしか、息の吸えない私たちを包むことができるのは、自分が傷つきたくないという理由で、誰かの吐いた我儘を曖昧に受け流し、気紛れに生温く頬を攫い、共にどこまでも落ちていく、そんな春の風だけなのだ。
あぁ、いつも正しい貴方にはわからないでしょう。汚れて堕落した私たちの痛みが。
あぁ、貴方には想像もつかないでしょう。弱音を吐くことがどれだけ勇気のいることなのか。
私にはあって、貴方にないもの。
それでも「生きてる」って感じたいの。