【和訳】The W.S. Walcott Medicine Show/The Band
拠り所も行き場もないのなら
おいでよ、ショーを見に行こう
聖人君子も罪人もいるし
敗者にも勝者にも会える
知り合ってみたいような人たち皆にね
一度行ったら忘れられない
W.S.ウォルコットの薬売りショー
テントの中にいつでも隠し持っているのさ
君がもし本物をお探しなら
その在り処は奴が教えてくれる
まじない師のうら若き女誑し
奴の一声で病気は治ってしまう
クロンダイク・クルー・クラックス蒸気船楽隊の
熱い音楽が流れれば
君は立ち上がって耳を傾けちゃうかもね
心配するなよ、忘れられないさ
W.S.ウォルコットの薬売りショー
生き長らえるより幸せに死にたいよ
声に耳を傾けられない馬鹿な男だから
会いに行こう、歯に目映いダイヤモンドをはめた
ミス・ブレア・フォックスホールに
彼女は根っからの純金
ロックンロール歌手で本物のそっくりさんだ
なあ君、こんなの見たことないだろ
一度行ったら忘れられない
W.S.ウォルコットの薬売りショー
W.S.ウォルコットの薬売りショー…
※注
W.S. Walcott
:架空の人名ですが、米国の実在した実業家フレッド・スイフト・ウォルコット氏(F.S.Walcott)がモデルです。ジャズやブルース、コメディやダンスや演劇といった移動ショーの団体「ラビット・フット・ミンストレルズ」を率いる会社を所有していました。
ミンストレル・ショーと呼ばれる黒人音楽のショーは、白人や、アフリカ系ではない黒人が「顔を黒く塗る」ことをして演じることが多かったそうです。一方上述のラビット・フット・ミンストレルズは全員アフリカ系アメリカ人を起用していたことで、「本物」であるとの評判でした。
詳細はWikipedia→
Medicine Show
:古くはヨーロッパを起源とする、「何でも治る治療薬」を売り歩く興行集団のショーのこと。"自称"医師が怪しげなセールストークをする傍ら、客寄せに音楽やコメディ、手品、見世物などが開催されていたそうです。20世紀以降はさらにエンタメに特化し、有名な芸能人やプロのミュージシャンが出演することもあったようです。
Klondike Klu Klux
:架空の名称ですが、恐らくクー・クラックス・クラン(通称KKK、アメリカの過激な白人至上主義団体)をもじっています。
Miss Brer Foxhole
:モデルはゴスペル歌手のDiamond Teeth Mary。上述のラビット・フット・ミンストレルズに出演していました。
名前については恐らくアメリカ南部の伝承に基づくキャラクター「Br'er Fox and Br'er Bear(キツネのブレアとクマのブレア)」から取っているようです。1946年にディズニーでアニメ化されており、日本のディズニーランドではスプラッシュマウンテンでお目にかかれます。
一度目にしたら病みつきと評判、謎に包まれた怪しい「W.S. Walcott Medicine Show」とは一体なんでしょうか?
作詞を手掛けたロビー・ロバートソンを始めザ・バンドのメンバーは多くがカナダ生まれですが、この曲はドラムボーカルのリヴォン・ヘルム(米国アーカンソー州生まれ)の経験談を基にして書かれたそうで、モデルになっているラビット・フット・ミンストレルズのショー、メディスン・ショーのいずれも、アメリカ南部の原風景だったようです。
歌詞は理解がとても難しいですが、20世紀初頭の音楽ビジネスの活気への憧憬と皮肉、ノスタルジーを感じます。