陰謀神話とパラノイア: ドイツ連邦刑事庁はハーナウの殺人事件を極右には分類せず
2020年3月30日
カールスルーエ発:ドイツ連邦刑事庁(BKA)の捜査官は、ハーナウにおける凶行を極右による犯行には分類しなかった。むしろ43歳のトビアス・Rは、自らの陰謀論的な妄想に可能なかぎり多くの注意を引き付けるために、意図的に自分の犠牲者を選別していた、そうWDRやNDRや南ドイツ新聞が週末に報じている。そう人種差別は、その主たる動機ではなかったのだ。
この事件の捜査を管轄しているカールスルーエのドイツ連邦検察庁の報道官も、月曜日にdpa通信に対して、このことについてコメントしている。それによれば、警察による操作は、なおも続けられるということである。
トビアス・Rは2月中旬にヘッセン州の都市ハーナウに引っ越しをしてきて、外国を出自とする9人の人々を射殺した。その後に捜査官が、彼とその母親が自宅で死んでいるのを発見した。ドイツ連邦検察庁は犯行の数日後には、「この犯行には人種差別的な背景の重大な兆候がある」と発表していた。
右翼のイデオロギーとは何も関係がなかった
たくさんの政治家やジャーナリストが、ドイツのための選択肢や右派系のメディアを、その内容が似ているということで、犯人へと仕立て上げた。トビアス・Rは、自らのウェブサイト上で数多くの文書やビデオを公開していた。とりわけそこで彼は、彼がスパイによって監視されていることや、他の数千人のドイツ人もまた、そういった状況にあることを書き記していた。そのスパイ業務の背景にはアメリカの仕業があり、合衆国との連携によって、それは人間の脳に「狙いを定めて」、それを遠隔から操作できるらしいのである。
確かに、それらの文書のうちには外国人に対する敵意を含んだ文章があり、そこでは世界規模における「おおざっぱな粛清」とさらなる「厳密な粛清」が必要であり、またドイツの人口は半分にされなければならないことなどが語られている。にもかかわらず、この犯人は、右翼的ないし極右的な書籍や思想家や作家や、あるいはノルウェー人の大量殺人犯アンネシュ・ブレイビク、2019年3月にニュージーランドで二つのモスクを襲撃して51名を殺害したオーストラリア人ブレントン・タラントなどとは、何も関係がなかったのだ。
人種差別はいかなる中心的役割も果たしていない
合同捜査がさらに報じたところによれば、人種差別はトビアス・Rの世界観のうちでは、中心的な役割を果たしていなかった。彼はとりわけ、スパイについての陰謀論的神話にはまりこんでいて、自分が追われているという狂気に苛まれていたのである。
しかも隣人から見ても、この男は、目立って人種差別的な発言をすることはなかった。彼が右翼のイデオロギーと関わっていたということを示唆するようないかなる証拠も存在しなかったのである。ハーナウの事件についてのBKAによる最終的な報告は、まもなく提出されるはずである。