ハロウィンの街で、あの日のわたしが呼んでいる -週末1000字エッセイ#44
10月下旬の週末。わたしは夕方に美容院の予約が入っていたため、それまで夫とカフェでお茶をして過ごしていた。「さて、そろそろ行こうかな」と席を立ち、店を出る。
街を歩くと、あちこちで仮装した子どもたちがはしゃいでいた。子どもたちは思い思いの衣装を身につけ、楽しそうに歩いている。夫と「そうか、ハロウィンだね」と顔を見合わせてうなずいた。
静岡の街では、毎年この時期に子ども向けのハロウィンイベントが開かれているらしい。魔女の帽子を被った子や、ふんわりしたドレスを着た小さなプリンセス、さらにはかぼちゃ姿の赤ちゃんまでいて、見ているこちらもつい笑顔になる。
「こういうのが本来のハロウィンよね」とわたしは微笑んだ。
渋谷でのハロウィン騒ぎが定着してから、もう10年は経つだろうか。ふと思い出すのは、当時、友人と一緒に渋谷でお茶をしていた日のことだ。昼間に入ったカフェで話し込んでいるうちに外はすっかり夜になり、店を出ると、目の前に広がる異様な光景に驚いた。お化けのような格好をした人々があちこちにいて、まるで異世界に迷い込んだような気分になったのだ。
わたしたちは人混みをかき分け、駅にたどり着いた頃にはすっかり疲れ果てていた。それ以来、「二度とハロウィンの渋谷には行かない」と心に決めたのを覚えている。
騒がしい祭りにはあまり興味がないけれど、思い思いの衣装に身を包み、楽しそうに歩く人たちを見ると、きっと彼らは幸せなのだろうと思う。
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