【翻訳チャレンジ】「Yの悲劇」サム警視について【越前敏弥『名作ミステリで学ぶ英文読解』より】

前回はこちら:https://note.com/p_achira/n/n929064692e75

越前敏弥著『名作ミステリで学ぶ英文読解』に取り上げられている部分を、自分でも翻訳してみます。

翻訳チャレンジ

第1章 エラリィ・クイーン『Yの悲劇』
[2] サム警視の風貌や人柄


ニューヨーク市警察殺人課のサム警視は、ヨーク・ハッターの唐突な葬儀の司祭役としてはうってつけだった。彼はあらゆる点で大きく、不恰好だった。怪物像のような険しい顔に、曲がった鼻とひしゃげた耳、そして巨体には大きな手足。人によっては、彼を引退したヘビー級ボクサーだと思うかもしれない——彼の拳は、犯罪との絶え間ない戦いによってごつごつと節くれだち、変形していたから。首から上は灰色と赤色で表せる。つまり、灰色の髪、粘板岩のような目、赤茶けた砂岩色の顔。質実で信頼できる人物だという印象を抱かせ、脳みそもしっかりと詰まっている。それに、警察にしてはまっすぐで実直な性分だった。彼はほとんど絶望的と言ってもよい戦いの中で歳を重ねてきたのだった。


余談

『Yの悲劇』で、いわゆる「ワトソン役」を務める人物です。上記の通りのいかつい体格で、元シェイクスピア俳優のドルリィ・レーンとは見た目にも対照的。
上の訳文のラスト3行、褒めているようで絶妙に褒めていないような……という表現ですね。
『Yの悲劇』を読んだ記憶の限りでは、そこまで他の警官がろくでなし揃いだった描写もなかったような……。いや、やっぱり「警察のプライドに懸けて、金輪際ドルリィ・レーンなんぞ頼るんじゃない!」みたいな流れはあったような。
ドルリィ・レーンの(名探偵にはよくある)もって回った物言いに、読者と一緒にやきもきしながらも、事件解決のためには彼の手を借りることが一番だと理解している、頼りになるキャラクターです。
絵になるバディなので、映像化したものが見たい……! と思ってしまいます。

次回はいよいよ「ハッター家」の登場。クセの強い人物が一気に増えるところですね。

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稲見晶
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