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私から見る「医療崩壊」という言葉

変な看護師ぴーまんです。

あんまりこの内容は乗り気じゃなかったのですが。

同世代の人たちに、ニュースで言われてることがどういうことなのかということを知ってもらいたいので、あえて書いてみます。
長文です。お時間ある時に読んでくださるとうれしいです。

4月の投稿

4月に緊急事態宣言が出されたときにも、よく「医療崩壊」という言葉が使われました。その時の報道があまりにも伝わらない気しかしなくて。
それで腹を立て、以下の内容をFaceBookで投稿しました。

お邪魔します。

ニュースで「医療崩壊」という言葉が飛び交っていますが、
昨年から、地域に飛び出してみて、異業種ともいっぱい話してみて、この「医療崩壊」が伝わってない(というか伝わる気がしない)と思ったので、いち看護師の観点で書かせてください。

私は以前勤めていた病院で、外科病棟と集中治療室に勤めていました。
その時の経験からお話します。(正直に言いますが、わかりやすさを重視しています。病気の詳細、その治療で何をしているか、とかは他で調べてください。)

外科病棟、、、手術前の患者さん、手術直後の患者さん、手術後リハビリしつつ回復を待っている患者さんがいらっしゃいます。ここでの看護師の人員配置は看護師:患者=1:7でした。これは、一日トータル計算でこうなればよいので、日中は人員を厚めに、夜間は逆に10~12、3人受け持っていました。

集中治療室(以下、ICU)、、、大手術の直後の患者さん、交通事故等の初期の救命治療を終えられた方、病棟等で急変された方、、、医療的に様々な理由で重症な方がいらっしゃいました。ちなみに、私の病院では、呼吸状態が悪くなって、挿管(挿管≒呼吸器で呼吸を補助するために喉に管を入れること)となると、基本その患者さんはICUに移動していました。例外もいますが。そのICUでの人員配置は看護師:患者=1:2です。それだけ、観察が必要になりますし、吸引(痰を取る)、皮膚状態に観察(若い方でも寝っぱなしだと床ずれができます)等の看護が必要です。この時点で、病棟の3.5倍の看護師人員が必要ということになります。

さて、最近ECMO(エクモ)という言葉も出てきました。私はこれを使用している患者さんを受け持ったことがありません。ICUの状況(急変は普通に起こり得る、心電図モニターが常に目に見える状況)に耐えられず、一年半でリタイアしたので。未だに、おなかに刺さってる体外に血液を持ってくるための太い管にびくびくしながら先輩とケアしたのを思い出します。ECMOついてる方の看護をできる方は本当にすごいと思います。さて、ECMO付きの患者さんの場合、看護師:患者=1:1です。

プレッシャーが、、、とか、呼吸器がついてると、、、とか言われるより、たぶんわかりやすいんじゃないでしょうか。以上をまとめると、単純に考えて、
呼吸器がついていない患者さんには7分の1人の看護師が必要。
呼吸器がついている患者さんには2分の1人の看護師が必要。
ECMOがついている患者さんには1人の看護師が必要。

算数が苦手な方のために。
看護師1人で呼吸器ついていない患者さん7人看れる。
看護師1人で呼吸器ついている患者さんを2人看れる。
看護師1人でECMOついている患者さんを1人看れる。

これだけの人員がいるんです。呼吸器とかECMOの機械を増やしても医療は人で回っています。だから、重症の方が増えるほど、人員が必要になれますし、その分看護師のプレッシャー、仕事量が増え、休める時間が減ります。看護師配置は、診療報酬の関係で諸々決まってたりしますが、勿論必要な医師の人数も、重症な患者さんが増えれば増えるほど増えます。
これがひどくなると病院の医療は崩壊します。人が疲弊するので。

医療、特に看護の分野では、その質(大変さの中身、看護の中身 等)について議論されることが多いのですが。その分野を知らない方にとっては数字(量)がすべて、数字が一番イメージしやすいのだろうなと思って、この文章を書きました。

4月の投稿に追記して

気付けば12月。早いですね。
医療機関はwithコロナ体制を9か月続けています。
正直、自分は昨年から訪問看護に移っててよかったと思います。こちらでも感染対策必要な為、結構ストレスフルですが、おそらく病院の比ではないのかなと感じます。

皆さん、
「看護師」
と聞いて、病院でどんな仕事をしているとイメージされますか?

実は分野ごとにやる事、考える内容が結構違ったりします。
看護師の仕事はいろいろな分野に分かれています。

看る臓器が違う、担当部署が違う(救急なのか、手術室なのか、病棟なのか、地域なのか)

ということは、おそらく、

新聞記者の所属(政治部、経済部、地域?)とか新聞を刷る側(すべて「新聞」という分野は一緒)

くらいの違いがあるんだと思います。
救急だと、そこにある命をマジでどうにかしないといけない。
手術室だと、麻酔にかかってる患者さんが大丈夫なように+先生が手術をしやすいように。
病棟だと、治療、手術前後をその方の日常生活を考えつつ看ていきます。

人の命と生活を看るという看護自体の本質は変わりませんが、その中身や使う頭は結構変わります。今までの経験はもちろん使えますが、配置換えを行ってすぐに使い物になるかというと普通NOです。(たまに、それができるハイパーなナースさんがいますが。)

先日、東京都が「重症病床150から200に増やす」というニュースを見ました。

私にはこのニュースは
重症=呼吸器とかエクモとか使う患者の受け入れ数を上げる
→意味することは集中治療の対象患者だろうから、増床分50人に常時、患者2人:看護師1人をつけれる体制でないといけない
→呼吸器、それ以上の治療を看ることができる看護師を常時25人増やさないといけない。
と映りました。

ちなみに、私は、普段の病棟での仕事の中で、2.3年目の時、呼吸器の患者さんを少しずつ先輩に面倒を見てもらいながら担当し、半年~一年かけて看られるようになりました。数合わせだけで済む問題ではありません。そこにいるのは天使でも何でもなくてヒトです。

人が異動すればいいというものではありません。人の調整をすること、教育にかかる時間、なかなか大変です。


仕事過多になるとミスが増える

重傷を複数持つということはそもそもストレス。

最近気づいたのですが、看護師の仕事って分野によっては
「何も変わってない事、異変がないことを看ることが仕事」
と言っても変ではないとは思います。

そんな中、重症患者が増えて、看る患者数が増えると、ちょっとした異変をキャッチすることができなくなります。結果、急変を引き起こす「何か」をキャッチできなかったりします。(これは人が医療をやっている以上、しょうがない事です。)

ますます重症が増える。

ここら辺の負のスパイラルになるとヤバイ。精神もやむ。

こういう風になると、本当に崩壊します。人も、体制も。

私も忙しすぎて怖い思いをしたことがあります。
あれは本当によくない。


報道のされ方について

著書などは読んだことはないのですが、
国連難民高等弁務官の故・緒方貞子さんの言葉で

「現場感というものがなくて、人は説得できないと思いますよ」

という言葉があります。
正直、この現場感の伝わり方が今の報道だとイマイチすぎると感じています。どうにかかみ砕いて、医療の現場で何が起きているのか、そもそもの背景も含めて報道してくださらないだろうか、と思います。


最後に

私個人としては、外出を自粛しろとかは本質ではないと思っています。

生きていくためにお金を稼がないといけないですし、人間だから人との交流も楽しみたいです。医療者も、そうじゃない方も。
コロナのために、自粛のし過ぎで精神がおかしくなっても、経済が回らなくなっても嫌ですし。公衆衛生を長期的に考えても、おそらく好ましくないんだろうなって思います。

密にならないように気を付ける事、
マスクをつけてできるだけ気を付ける事、
(やりたい事と状況を鑑みて)リスクを下げる事、

ここら辺に考えていただいて、医療者が抱える負担を「精神的配慮」っていう形で一緒に背負っていただけるとありがたいです。

あと、

「祈る」為にライトアップするなら、その為のお金を保健師、病院看護師の給料に直接回してほしい。これはマジで思ってます。


長々と失礼しました。
ニュースの中身が少しでも「あー、そういうことだったのね」となることを祈っています。


週1NOTE向きではなかったかなー。
3475字。

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