「おひとりさま」に優しい国【日本文化の考察その①】
「日本人の若い人が全然恋愛しなくなったって本当?」
先日、ベルギー人のペンパル(文通相手)から来たメールの内容です。
なんとも鋭い質問を投げかけてくるなぁ、というのが本音でした。実は私も、恋人はいらない派。いや、いらないというより「いい人がいればお付き合いしたいけど、いなければ1人でもいいや」という考え、と言った方が正しいかもしれません。こういうタイプの人、確かに私の周りにも多い。メディアでも「恋愛をしない若者」のような内容を見たことがある気がします。
他人事ではないなぁ、と苦笑しながらも、返信に悩んだ私。恋愛をしない理由は人それぞれですが、異文化を理解してくれようとしている人に適当なお返事はできません。このメールは、日本人である私が日本の特性を考えるためのきっかけになりました。
そこで今回は、私が悩みに悩んで出した日本人の若者が恋愛に消極的な理由を3つ、シェアしたいと思います。
1 ほかに楽しいことがたくさんある
私自身は海外に住んだことはないですが、ヨーロッパ在住の日本人がtwitterで「日本には、ヨーロッパとは比べ物にならないくらいたくさんの娯楽がある」と呟いているのを見たことがあります。
日本にいると気が付かないものですが、確かにそうですよね。テーマパークやマンガやアニメ、テレビ番組も豊富ですし、期間限定のイベント事がそこらじゅうで開催されています。
これだけですと「海外と比べるほどか?」と感じるかもしれませんが、一つ一つの内容が濃いところも特徴だと思います。
例えばテーマパークはディズニーランドをはじめ、ピューロランドや富士急など、種類がたくさんありますよね。地方にも、ハワイアンズなど魅力的な施設がたくさんあります。しかもテーマパークは一度行ったら終わりではなく、季節ごとのイベントや新アトラクション・新キャラクターが次々と登場するなど、利用者を惹き付けてやみません。
それから日本が誇るマンガやアニメ、ゲーム。海外に輸出されているものはほんの一部で、日本国内のコンテンツはもっとバラエティ豊かですよね。またこれらも、アニメを見て終わりではなくコラボカフェやグッズ、握手会に舞台化や実写化、フェスなど、ひとつのコンテンツに付随して何通りもの楽しみ方があります。ゲームだって、スマホで気軽に楽しめるものからボードゲーム、またSwitchなど機械を買って楽しむものまで、種類が豊富ですよね。
このように、日本には娯楽があふれています。裏を返せばそれだけ消費社会であるということなのでしょうが、確かにこれだけ楽しいことがあれば、恋人がいなくても退屈しない気持ちは分かるかもしれません。
2 身体接触の文化がない
日本と欧米諸国の文化の違いとして真っ先に上がるものに、ハグなどの身体接触文化の違いがあります。日本では家族でさえはハグはしませんし、たとえ家の中だとしても、欧米諸国ほど恋人といちゃついたりしない印象がありますよね(もちろん、個人差はありますが)。
それに加え、最近着々と支持を集めているリアコ文化。「リアコ」とは「リアルに恋する」、つまり芸能人やアニメのキャラクターに恋をすること。おおっぴらに言う人は少ないかもしれませんが、わりと人口は多い印象を受けます。言葉は文化の現れです。「リアコ」という言葉が生まれている=ある一定の層から支持を得ている証拠。大好きな(リアコの)アイドルやキャラクターのネームタグを作ったり、グッズを集められるだけ集めて部屋に「祭壇」を作ったり、カバンを思い思いにデコレーション(いわゆる「痛バ」)したり……街やSNSで見たことがある人も多いと思います。二次元のキャラクターやアイドルに恋することはもはや「いわゆるオタク」の奇行(言い方は悪いですが)ではなく、普通にありうる現象になっています。
確かに身体接触の文化がない、つまりその必要がないなら、恋する対象として二次元のキャラクターやアイドルでも何の問題もありません。恋をしてドキドキする気持ちや、毎日楽しく晴れやかな気持ちで過ごせるのは、相手がクラスの男の子でも、アニメのキャラクターでも同じですよね。日本のアニメはクオリティが高いですし、アイドルとファンの距離も、昔よりずっと近くなりました。
また、「日本人は世界で一番性行為をしない」というデータも有名です。色々理由は考えられますが、そもそも身体接触の文化がないということも理由のひとつでしょう。恋人や夫婦間のコミュニケーションとして、たとえ愛情があったとしても、必ずしも相手への接触が含まれない文化なのではないでしょうか。
3 「おひとりさま」に寛容
ひとりカラオケ、ひとり焼肉、ひとりディズニー(!)……おひとりさまに寛容なのも、現代日本の特徴です。最近は半個室の一人席がある飲食店もありますし、需要が増えているように感じます。
もちろん、例にあげた行動は元々は「仲間と行く/する」もの、という意識がありました。だからこそ、わざわざ「おひとりさま」なんて言葉がついたのですね。
この「おひとりさま文化」の広がりで単独行動がしやすくなり、恋人を作る必要性も減ったのではないかと考えています。
また、日本は欧米のようにカップル文化ではありません。友達に恋人を紹介することも少ないですし、パートナー同伴が原則のイベントも、少なくとも私は聞いたことがありません。普通に生きているだけなら恋人がいなくても何の問題も起きない社会構造になっています。せいぜい困るのは、仲間うちで恋バナをする時だけ。パートナーがいないから男友達にイベントの同伴を頼むなんていう事態は、日本ではまず発生しないでしょう。1人で気軽に顔を出せる場所が多いのも、日本社会の特徴です。
まとめ
今回は、日本人の若者が恋愛をしなくなった理由について、
1 ほかに楽しいことがたくさんある
2 身体接触文化がない(=必ずしも現実世界で恋人を作らなくてもいい)
3 おひとりさま文化が発達している
という3つの考えをご紹介しました。
ベルギー人ペンパルからの思わぬ質問を大真面目に考察した私ですが、ここまで考えて感じたことは、欧米諸国の人々も、色々な縛りの中に生きているのだなということ。まず、パートナーがいないと肩身が狭い世界である印象を受けました。そして、欧米諸国と比べて日本は不自由だ、と言われがちですが、休日に何をするかの選択肢がたくさんあり、二次元やアイドルへの恋心もある程度認められている日本社会は、別の視点から見たらとても自由な国なのではないでしょうか。
日本社会も外国の社会も、ある面では自由で、またある面ではそれぞれの社会規範からなる「縛り」を抱えています。「縛り」とは、その地域の文化ごとに生み出されたもの。「日本は不自由、外国は自由」ではなく、「どんな文化や考え方が自分には合っているか」ということなのですね。どんな国でも、その国ごとの「縛り」があるものです。
そして不思議だと感じたのは、日本はおひとりさまに寛容な文化が発達してきたのに、まだまだ結婚していない人は異様な目で見られる社会であること。結婚して当然、という意識が根強く残っているのは、日本人は「形」を重要視する民族であるからだと私個人は思っています。実は、この意識は近世江戸時代から続く日本のお家芸なのです。
「日本人が『形』を重要視する」民族であるとはどういうことか。次回、江戸時代と現代日本を比較しながら、この謎に迫ってみたいと思います。
この記事が、「日本人」と「日本文化」について考えるきっかけになりますように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
また、今回のテーマについて別の考察がある方は、ぜひコメント欄で教えてくださいね。ここで述べた意見が全て正解とは思いませんし、正解のない問いだからこそ、様々な意見を聞いてみたいです!
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