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口内炎だと思ったら「がん」だった話(7)〜 リハビリの開始

先日、通院した際に口腔機能の通院リハビリを行うため、紹介状をもらいました。
申し出てから約2週間。(早く言えよとなりますが、1年前から通っているクリニックに術後の報告と紹介先の相談をしてから行こうと決めたのでこの時期になりました。ご了承ください。)
主治医は入院前の検査から術後の経過、通院状況まで細かく書いてくださり、封筒が分厚くなりました。何が書いてあるのだろう?とすごーく中身が気になりますが、私は開けちゃいけないので分からず。紹介先の初診は月末なのでそれまでソワソワします。笑


前回のあらすじ

ICUでたんの吸引前にネブライザー(ネフライザ)を使い「吐き気が軽減される」と判明。それがそのままHCUでも引き継がれました。カニューレの栓もスポンジ栓に切り替えられ、鼻と口で呼吸ができるようになりました。
それでも無理やりカテーテルを突っ込むと吐き気をもよおすことに。吸引との闘いはいつ終わるのだろうか?

★これまでの話はこちらから読めます

2月26日(月)

HCUから一般病室に移動

この日でHCU生活は終了。
ドレーン膀胱留置カテーテルも外しました。
それに伴い、紙パンツを卒業!久々に自分の下着をつけました。

下肢静脈瘤防止のために左ふくらはぎにつけていた弾性ストッキングも外します。
(これまで書いてませんでしたが、術後ICU入室からずっとついてました。)
ベテランの看護師さんがものすごい馬力で弾性ストッキングを外すと、左のすねに赤い発疹が広がっていました。

うわっ!これはひどい!かゆい?

まだ話せない私は頭を下に振りました。すごくかゆかったです。
思い返してみると、昨夜にふとんの中で左脚がぼっーと熱くなってました。外すとこうなっていたのかと納得。

「(術後から)ずっと着けていたから蒸れちゃったのだろうね」と看護師さんは話していました。すぐに担当医に確認して軟膏(強力!)を処方されました。

蒸れと乾燥。私の肌は意外と弱かったと証明されました。
普段はハンドクリームを塗らずに冬を越せるのに、HCU入室から脚や腕に粉が吹き「ヒルマイルド®︎」を塗ったくっていました。(持参してよかったです。)

10時からの移動でしたが、病棟が立て込んでいましたので、それまで看護師さん2人とSTARTO(旧ジャニーズ事務所)の好きなグループについて話していました。といっても、私はわずかに漏れる息のような声で反応して話を聴いているだけでした。

再び口腔外科の病棟に戻ってきました。
ゆっくりする暇もなく、そのまま処置室、耳鼻科に呼ばれました。
処置室では血液検査の結果がすごくいいと主治医から褒められました。
術後の経過は順調だそうです。
耳鼻科は何をしたかうろ覚えですが、呼吸の通りの確認・検査をしたと思います。(あっという間で記憶に留められませんでした。)

その後、病室で口腔機能のリハビリに。
この日、初めて院内の言語聴覚士さんとお会いしました。
初回ということで、まずはアンケート形式の用紙に答えました。(職業、住まいについて、既往症、障がいの有無など)
水をスプーンですくって飲むこと、ゼリーを食べることを試しました。

お昼に白湯とミルク味の栄養剤を投与した後は歯科(口腔ケア)に呼ばれました。
歯ブラシとケアスポンジ、うがい用のコップを膝に抱えて車椅子で1階に下りました。これから食べる練習をするにあたり、歯と舌のケア方法を指導いただきました。
歯ブラシを握るのも約5日ぶり。手術をしてから何も口にしていないので、私はどこに食べ物が挟まるのか未知数でした。
歯科衛生士さんは「右側の舌を手術すると右下に食べ物が残りやすいからよく磨いて」と言いました。私は鏡を見て歯ブラシを横に移動しました。

この日は栄養剤を入れた時に何かの食べものに似ているなーと感じていたことがやっと言語化できました。
それは、たんと一緒だと「バターミルクパンケーキ」を食べたあとの味がするのです。(なんかもう、何も食べなさすぎてここまで妄想できるようになりました。)

お風呂に入らず約1週間。あまりに頭がかゆすぎて、とうとう昨日母が持ってきてくれた「水なしシャンプー」を使いました。
頭皮にシュッと噴射し軽く揉み込みました。濡れたタオルで拭き、髪の脂ぽさはなくなりましたが、頭皮から白いフケが!

ぎゃー!!

拭けば拭くほどフケが…。もう、これはちゃんと洗ったほうが良さそう。いつシャワーが浴びれるか、切望するばかりでした。


2月27日(火)

快晴。病室の窓からきれいに東京スカイツリーが見えました。

朝はいつものとおり、体温・血圧・ネフレイザー・吸引のルーティンをこなし栄養剤を投与しました。

この日、気管支に挿入されていた「カニューレ」が外れました。
やったー!これで地獄の吸引とおさらばだー!と嬉しかったです。
しかし、カニューレが外れても口の中に唾液やたんは溜まります。なので、吸引器の管を口の中に入れ吸い取ること(歯科で唾液を吸引するホースに似たやつ)は続きました。(これもHCUのときから続けていました。ベッドの横にがっしりテープで固定していました。看護師さんありがとうございます!)

形成外科からは、あす右ふくらはぎを抜糸すると指示がありました。
身体に埋め込まれた固い針のような、糸のようなものが外れるだけで自由さを感じました。

リハビリ2日目。
この日は1階のリハビリテーション室で嚥下機能のリハビリを行いました。まず、リハビリテーション計画書について説明がありました。私はそれに目を通しました。
さらに、構音トレーニングのことや前職のことを話しました。(再建術した側の舌が腫れてもぞもぞしました。唾も溜まり話が止まりがちでした。)
その後、さっそくリハビリへ。
水50ccをスプーンで飲みました。
水にとろみの粉を入れたゼリー状の液体だと舌の上にのっけて飲み込むことができました。時間は40分かかりました。
鏡を見ながらゼリー状の液体をスプーンで左側に持っていくなど工夫が必要でした。

食事の時に必要なので、後日病院の売店(ローソン)で購入しました。

午後にリエゾンチームの心理師さんが回ってきました。
精神腫瘍科の医師とは別で見て回っているそう。入院中の悩みや困ったことを話していいと説明がありました。
ここでの悩みは「洗髪したい」。術後から約1週間シャワーを浴びてないことを心理師さんに話しました。
解決に至ればいいのですが。

コインランドリーで下着を洗ったり、(お風呂に入れないので)体を拭いたりしました。

17時半ごろ、主治医らの回診。
「管が外れたからどんどん話していいよ。リハビリにつながるから」と主治医は気軽に言いますが、病室でひとりだとね…。

つづく


おまけ

小説「おいしいごはんが食べられますように」感想

半年前に図書館で予約した本の順番が回ってきました。
書店で立ち読みして「おもしろい!読みたい」と思ってから早2年。退院して求職期間に再び手に取るとは思いませんでした。

簡単にいうと、中小メーカー企業で働く20代男女3人の仕事と恋愛を「食べること」をとおして描いた話。
仕事から離れている身とはいえ、食事に関してめちゃくちゃ神経を使って生活している今の私の状況に噛み合ってました。

主人公の一人・二谷(男性)の「腹が膨れればなんでもいい」という食への無関心さ。確かに、食事の準備をすることは労力が要ります。特に、仕事終わり。時間が遅くなればなるほど、作ることが面倒になります。
私も二谷の感情に共感します。しかし、この病気になってからだと少し違うかなーと思うところも出てきました。

例えば、付き合うことになった芦川さん(女性)が作った夕食はおいしいけれど、二谷はなぜか満足できず夜中にカップ麺を食べる場面。

二谷は二谷なりの不満を抱え、それを解消しようとカップ麺をすすったのだと思います。

この病気をしたから、
呼吸すること
食べること
話すこと
それらがどれだけ普段の生活の中で無意識に行われているか実感しました。また、生きていく上でそれらが人に楽しみを与えているのだと感じました。

お風呂でシャワーを浴びるたびに思うことなんですが、
「食べる」ことってこんなに工数が必要なんだと感じています。舌を使って食べ物を適切なところに運んで、歯で噛んで、飲み込む。
生きていくために「食べる」のに、ほかの人より食べ方の工数が多くかかってしまうことに嫌悪感を抱いています。

食べる時間と食後のケアが必要なこと。(ほかのことと並行して食べることが難しくなりました。いわゆる「ながら食べ」。)
食べ方の工夫が必要なこと。(料理方法、切り方など。)
食品を選ぶこと。(餅やパサパサした食品を避けるなど。)

こんな辛いなら、いっそ、何も食べないで暮らしていけたらなーと思います。
なんか、二谷と同じ考えですね。

食べることに時間を奪われるなら、その時間をほかに使いたい。
しかし、お腹の音が鳴って、体が動けなくなって、結局食べざる得なくなるのです。

自分の鼻と肺で新鮮な空気を吸うことは気持ちいいですし、
食べること、誰かに話すこと(しゃべること)によって人に会う機会が生まれたりするのです。(黙食が推奨されていたコロナ禍はカフェやレストランに行っても活気が薄れ、気持ちが沈んでいましたね。)

私たちは食べることをとおして、人の関係も築いているとこの小説から読み取れます。舌がんで食べることを奪われてしまうと、そういう人間関係の築き方・楽しみも半分、またはそれ以上に減ってしまいかねないのだと思われます。
だから、入院期間にできるだけリハビリをして早期に回復するよう医療従事者の方々は計画を進めてくれているのです。

「最新スイーツ」「手土産におすすめ」「いま流行りの〜」…
SNSやテレビ番組、雑誌の特集記事を観れば、食べものの話題はつきません。
それほど、食べものは全世界の人類が共通する、永遠に尽きないトピックなんだと思いました。

1冊の小説からこんなことまで解釈するつもりはなかったのですが、
生きていくために食べるのが人間だと思います。

外食や中食(お惣菜や冷凍食品)など、じぶんの生活のスタイルに合わせながら食事をすることが一番です。芦川さんほど完璧を求めないことも、自炊を継続するコツなのかもしれません。

まぁ、お腹が満たされれば、なんでもいいんですけどね。