
包帯クラブ 天童荒太
ワラはもう、ディノと共に生きるってことでいいでしょうよ。
包帯クラブを読み終えかけた時に、思ったことが上のこれです。
もうひとおしだよ。ディノ!
分かってあげてよ、ワラ。
物語や映画やドラマをたくさん観るようになって、気づきました。わたしはやっぱり、人が好きなんだってこと。
だから何を読んでも観ても、登場人物に魅力を感じて、そこに存在する人々の幸せを願うんだなぁと思うのです。
「包帯クラブ」とは、中学時代「方言クラブ」の仲間だった、ワラ、タンシオ、テンポ、リスキの女子4人に、包帯クラブを始めるきっかけとなった新たな出会い、ディノと、タンシオのバイト仲間ギモの男子2人の合計6人のメンバーが、苦しい記憶のある場所に、包帯を巻くことで心の傷を癒そうとするクラブ活動です。
ワラ達にもそれぞれ癒されたい傷があり、包帯を巻いていく行為を通して、様々な想いを抱き、考え、思い返すことでまた傷つきながら、それぞれの思いを昇華していくということが、ストーリーの柱となっているのです。
ディノは、数々の奇妙なエピソードを持ち、そのために停学処分も受けたことも、入院をしたこともあります。
ただその意味不明な行動は、彼なりの意図をもった実験で、ディノいわく、「本物の百分の一、いや、一万分の一にもみたないだろうけど、何も経験しないより、相手に近づけた気がする。」
ために行なっていることなのだといいます。
ディノにもまた深く苦しい記憶があるのです。
そんなディノの想いを理解して、周囲からは「ディノを制御できるのはワラだけ」と圧倒的信頼感を得ているワラ。それが冒頭の2人なのです🤗
包帯クラブの趣旨を読み解いてみると、このお話の背景はずいぶん重いもののように感じます。なのに読み進めていく間に感じるのは、痛めたところに包帯を巻いてもらう時の安心感に似ている温かさに、終始包まれているようなものです。
包帯クラブの活動を読者の立場で追体験していくことで、自然と包帯クラブの活動の意図通りに癒されていくのだと思います。
お話の最後に、ワラが思ったことを以下に記しておきましょう。
甘いなりに多くの傷を受けながら、それでも生きることを引き受けるなら、自分のためだけでなく、それが誰かのためでもあるのなら、自分たちが最も欲しくて、でも、本当にあるのかずっと疑っていた、口にするのも恥ずかしい、例のアレが、そこには存在しているってことに、なるんじゃないだろうか。
アレとは…。もちろんここでいうアレは、阪神のアレではありませんね🤗
「包帯クラブ」の題名は知っていたのに、なんとなくその言葉の響きに不穏なものを感じて、手に取ってみようと思えずにいました。
読んでみて、このお話はとても好きだと思いました。そしてこのようなお話を書く、天童荒太さんの他のお話も読んでみたいと思いました。
好きがまたひとつ増えました☺️