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妊娠は、低確率✕低確率✕低確率の先に起こる“奇跡の現象”【最速妊娠エッセイ】

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採卵&採精後、今後の体外受精のステップを培養士さんから教えてもらいました。

受精卵のグレードや妊娠率など、いままでふわっと把握していたぐらいの知識が、具体的かつ自分事になり、一気に体外受精についての解像度が上がりました。

採卵&採精からの体外受精を行うまでの大まかな流れはこんな感じになります。

出典:セントマザー産婦人科医院

この一連の流れも、すべてにおいて次のステップに進めるかどうかの関門があり、妊娠・出産に至るということが、小さな奇跡の積み重ねの先にしかたどり着けない、途方もない旅路のように感じました。

■胚盤胞になる確率はかなり低い

まず、体外受精をするにあっては、移植可能な受精卵(=胚盤胞)を育てないといけません。

卵子の成長過程は・・・

出典:千葉大学プレスリリース

採卵&採精したものを合体させ、受精卵にし、その後、培養液の中で順調に、卵巣に戻す前の”たまご”の状態(胚盤胞)まで育てるのですが、卵子が受精して胚盤胞になる確率が、衝撃的な低さなのです。

妊娠のプロたちが知恵を出し合っても、現代の技術では、100%妊娠させることができないということを痛感することができました。

まず、最初に教えてもらったのは、卵子の成熟度でした。

妻がゴナペンを打ちながら、オナラを我慢しながら、大切に育てた卵子は、一体どれぐらい育っていたのか・・・。

■卵子成熟度によって妊娠率も変わる

採取した卵子の成熟度は、三段階あります。

出典:亀田IVFクリニック幕張

妻の卵子の状態は・・・

M2✕3個、M1✕1個、GV✕2個の合計6個でした。

「M」は、成熟卵。「GV」は、未成熟卵。

GV卵子は、1日だけ培養して成熟卵に成長できれば受精させることが可能。
ただし、GV⇒Mに成長したのち胚盤胞になる確率は、わずか15%ほど。

未成熟卵は、そもそも良好胚盤胞になる確率が低いのだそうです。

M2が一番いいグレードで、このまま最高の状態まで成長すると、妊娠確率は約65%ほどとのことでした。

最高の状態の胚盤胞でも、妊娠率65%というのは、衝撃的な数字です。

35%の確率のハズレを10連続で引き続けるなんてことも、パチスロの感覚で考えると、なくはない話です。

不妊治療が一筋縄にいかないのは、至るところに、”確率の壁”があるためだということを感じ、背筋に冷たい汗が走りました。

■受精卵から胚盤胞に育つのも低確率

受精卵は、採卵・採精の当日に作られます。
状態が良好なら、その日の夜に、少し小さいものは、翌日まで培養し成熟させるそうです。

未成熟卵は、30%ぐらいの確率で成熟卵に成長するそうです。
また確率・・・。
ちなみに、そこから胚盤胞になる確率は、わずか15%。
なんという低確率・・・。

卵子、精子ともに元気で活発な時の体外受精は、いわゆる”ふりかけ法”。
これは、卵子の膜を溶かす溶液を持った精子が大量にいた場合。
受精に到るまで、精子は「卵子の中に入る」という目的のもとプチ団体戦をしています。

卵子の膜という最終関門を突破するために人手が必要だから、精子は1回の射精で何億匹も飛び出していくんですね。

そのうち、たどりつくのは、わずか1匹。

まさに、奇跡の確率です。

生まれながらにして、奇跡の子、選ばれし子、神に愛されし存在です。

なお、精子の数が少ない場合や直進性が低い場合は、顕微鏡で見ながら、卵子に直接、精子を注入する「顕微授精」になります。

海賊妻「おやおや、精子の濃さには自信があったみたいですけれど、数が足らないとは、誠に残念でありましたね。まあ、顕微授精でもよいではありませんか、オホホホ」

大河ドラマの武将の妻のような上から目線でいじられて、僕は唇から血を流すほど悔しがりました。

培養士さんからは、めちゃくちゃフォローされましたが、男として妻に申し訳ない気持ちになりました。

受精卵を胚盤胞にするための、胚培養期間は5〜7日。
ちなみに、この期間が短い方が妊娠確率が高くなるようです。
5日目までに胚盤胞になってると理想的で、具体的な数字は・・・

5日目だと約60%。
6日目だと約40%。
7日目だと約20%。
※この数字はクリニックによってバラバラなので、あくまで目安程度にしてください。

7日目に胚盤胞になったとしても、わずか20%ほどしか妊娠が見込めないのだそうです。

胚盤胞になるまでに、長い道のりがあるのに、それを経てもなお、この確率を告げられると、心が折れそうになります。

不妊治療は、修羅の道です・・・。

■胚盤胞になったらやっと凍結

体外受精における受精卵の培養は、卵子から胚盤胞にまで育つまでが一区切りです。

厳密にいうと、胚盤胞から孵化胚盤胞に育つまでが一区切りという方が正確かもしれません。

受精卵は、透明な殻で覆われていていて、最後は、受精卵自らがその殻を突き破らないといけません。

しかし、それができずに力尽きてしまう受精卵も多いのだそうです。

そのため、アシステッドハッチングという、殻を除去する処置を行うのだそうです。この処置を行うことで、妊娠率が若干変わるとのことでした。

出典:アートクリニック産婦人科


そうして出来上がったのが、「孵化胚盤胞」。
ここまで来たら、あとは凍結保存をするだけです。

■凍結保存できる個数は?

培養士さん「凍結保存できる胚盤胞が何個できたかは、12/29頃にわかりますので、また来てください」
(※話を聞いたのは、12/24)

また、数日間の“待ち”です。

人工授精・体外受精は、“確認”のための“待ち”が非常に多い・・・。

不妊治療を経験した人いわく、この待ち時間で色々考えてしまうため、精神的に不安定になってしまう人も少なくないんだそうです。

次は、5日後。

年末でバタバタしているなかで、このモヤモヤを抱えながら仕事をしないといけない妻は、相当なストレスのはず。

海賊妻「次の診察を終えたら、まだ酒が飲めるうちに、パーッと行こうぜ」

オザワ「そうだね!」

海賊妻「6個中何個、凍結できるかな。せめて1個は頑張ってほしいな・・・」

先のことを考えると、移植後の着床率や胎嚢確認、心拍確認、流産など、まだまだ確率に翻弄されることが控えており、少しでもそんな現実を考えなくていい瞬間を作ってあげられたらなと思いました。

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