読み聞かせについて思うこと
「子供に本を読ませたいのだけど、どうしたらいいか」といった保護者の悩みを見聞きする。
そこでよく出てくるのが「読み聞かせ」だ。
読み聞かせというのは、文字どおり親が読んで子供に聞かせるというもの。
書物が一般的に普及して以降、ちゃんとしたご家庭では昔からあった親子のコミュニケーションの一つだろう。
それがいつ頃からか、コミュニケーションであり、知育法の一つとなったように思う。
本が好きな子は、頭が良くなる(ような気がする)。
だから本を好きになるように、読み聞かせをする。
あるところでは、「読み聞かせ」しないと頭の悪い子になると思っているくらいだ。
子育ての世界でままあることだが、こういった極端な思考の声が大きいことで、子育て中の母や父を苦しめたりする。
母乳信仰もそうだろう。
母乳ではなくては体の弱い子になるとか。
ミルクはよくないとか。
初乳はもちろん大事だが、その後に母乳で育てようが、ミルクにしようが、
母乳とミルク混合にしようが大差はないはずだ。
授乳のひとときには、たしかに幸せを与えてもらった。
一方で、母乳信仰の人たちから嫌なことを言われて傷ついたことがあってうんざりした記憶もある。
事情があって、ミルクしかあげられない人の気持ちなどないものだとしているのだろう。
閑話休題。
うちには歳の差が5歳の息子が二人いる。
はじめての子育てで気合いが入っていたので、長男にはほぼ毎晩寝る前に読み聞かせをしていた。
その結果、長男はたしかに本が好きな子になった。
特に物語を好んでいる。
小学2年生くらいから角川つばさ文庫も手に取るようになったし、『ハリーポッター』もコツコツと読んでいた。
ただ、それが受験の国語の成績には直結しない。
本が好きで読むのと、国語の読解はまったく別物だ。
長男の場合は、もしかすると受験の国語で多少、読書が好きではなくなったかもしれない。
次男はというと、長男ほどには読み聞かせをしなかった。
九歳になった今でもそうなのだが、次男はとにかく寝るのが早い。
そして寝付きがおそろしくいい。
0歳児から目を離せば寝ていたし、寝かしつけをした記憶がない。うっかり目を離すと寝てしまうのだ。
0歳の時にはなかなか寝てくれないし、その後もしばらくずっと添い寝をしないと寝れなかった長男とは大違いだった。
なので、読み聞かせをする隙があまりなかった。
読み聞かせても、本当に5行ほど読んでいるうちに寝てしまうのだから。
その結果なのか不明なのだが、次男は本に興味がない。
とくに物語にはまったく食指が動かないようだ。
図鑑やノンフィクションならけっこう好きなので、そういうものを主に勧めているが、とはいえあまり乗ってはこない。
でもこれが読み聞かせだけで生まれた違いだとは思えなかった。
ところで、次男は小さい頃から歌詞を覚えるのが得意だった。
音楽を流していると、いつのまにか覚えて歌えるようになっている。
『Habit』も流行りはじめてすぐに覚えて歌っていたし、ロカボのテンポが速い曲もいろいろ覚えている。
おそらく次男は聴覚優位なのだろう。
一方、長男は歌詞を覚えるのは苦手だ。視覚優位なのだろうと思う。
聴覚優位の人は耳からの情報を得るのが得意だ。次男が文字を読みたがらないのも、そのあたりが関係しているような気がしている。
読み聞かせをして、デメリットは何一つないだろう。
するか、しないなら、したほうがいいかもしれない。親子のコミュニケーションとしてとてもいいと思う。
だけど、読み聞かせをすれば本を読む子になるか(本を好きにはなるとは思うけれど)といえば、はっきり言ってよくわからない。
わたし自身は、親に読み聞かせなんて一度もしてもらったことがない。
そもそもわたしは親と一緒に寝たことすらないのだけど……。
それでもわたし自身、そして姉たちも本はけっこう読むほうだろう。
なぜなのかと考えたら、家にたくさん本があったからじゃないかと思う。
母と父はよく本を読む人たちだった。
応接間には大きな本棚があって、そこには雑多とした本が並んでいた。
正統派な家庭にありがちな、飾るのにいい百科事典や○○全集という類のもはまったくなくて、母と父が読みたくて買った本ばかりだ。
たとえばオカルト好きの母なので『ノストラダムスの大予言』シリーズやシャーリーマクレーンの本や雑誌『ムー』の定期購読や、宇宙の謎ものとか、そういうものがたくさん置かれていた。
ヤクザ物と歴史と漫画が好きな父は、山口組の抗争ものだとか、歴史小説や歴史雑学本、『サザエさん』『じゃりんこチエ』『あしたのジョー』などがあった。
今思うと、こんなに趣味丸出しの本棚を客人を通す応接間に、よくもまあ堂々と置いていたものだと思う。
本棚には姉たちが買った流行りの小説なども混ざっていて、わたしは暇になると、適当に選んで読むようになった。
父は必ず毎日隅から隅まで新聞を読んでいたし、両親が読書している姿を自然と目にしていたので、読書も身近だったのかもしれない。
あれだけ読書をしていた長男の興味は、すっかりスマホと漫画に取って変わってしまったし、次男が本に興味を示す予兆もまったくない。
だけど、家のいたるところに本を置くようにしている。
家の中の景色は彼らの原風景となるだろう。
いつか大人になった時に、
「そういえばうちは本だらけだったな」と思い出すかもしれない。
それがトリガーになり、彼らの中に眠っていた何かを引き出すことがあるかもしれない。
それもまたタイムラグのある、親子のコミュニケーションだろう。
どうしたら本を読む子になるのかという問いにたいして、はっきりした答えは持っていない。
ただ、読み聞かせをしなくちゃいけない、と思いすぎなくてもいいと思う。
読み聞かせって、案外面倒なものじゃないですか?
コミュニケーションとして楽しめているならどんどん、毎晩してくれてよいのだけど、こうしないとダメな親だという思考にならないでほしい。
子供が一人で遊んでいるのを横目に、好きな本や漫画を読んでいるほうが案外いいかもしれないですよ?
スマホで見ていると、ゲームをしていると思われてしまうそうなので、ここは紙の本や漫画のほうが効果的だろうか。
ただでさえスマホの普及で本離れしているので、発信側としてはそんな提案をしてみたくなるのだ。
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