
遠い思い出に囚われた未来などタイムスリップした様なものです
4年越しに初めて会ったあの人。まさに"憧れ""理想"を具現化したかのような人だった。
大好きなバンドの仙台でのライブ終演後、そのまま彼の車で彼の家のある富山まで着いて行った。当時高校を卒業したばかりの私にとっては、大旅行だった。
彼の家に3泊した後のお別れの夜。
どこか行きたいとこある?とのことで、花の中桜が1番好きな私は新潟県の高田公園の観桜会に連れて行ってもらうことにした。
オレンジ色の暖かい光が散りばめられた会場。光に照らされ、夜に光る薄紅色。すべてが幻想的。
そしてなにより、4年間、画面の中の"文字"としてしか存在を感じられなかった彼が隣にいる。
これは現実なのだろうか。
「見てこれ。いい感じ。」
そう言って差し出された彼の画面には、桜と共に私がいた。
今も貴方が今見ている機械の中に私は存在できてますか?
返信は来ませんが元気ですか?
元気ならそれでいいんです。大好きだから。貴方が今も何処かで息をしている、という事実だけで、私は心臓を動かせてしまうのです。
ただ、一つだけ、我が儘を言えるのなら、せめてもう一度だけ、貴方の隣で呼吸がしたい。次に会う約束が欲しい。
もう最後にあってから半年過ぎたよ。そろそろ足りないよ。
これからどんなに素敵な人と出逢おうと、ずっと貴方との思い出にしがみついたまま、私は生きていくんだろうな。
貴方は優しすぎるから、ただでさえ美化されていく過去が、ずっと、ずっと綺麗なままだよ。
思い出に囚われたまま、時間だけが過ぎていく。まるであの日の私のまま、今にタイムスリップしてしまったようだ。
まあ、別に、それで、それが幸せだから、それでいいんだけど。
いつか、貴方とあの桜をみた"過去"と"今"が一致するまで、私は過去で息をし続ける。