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ドラゴンズ戦にて

母親はよく言います。

「ワシは昭和20年からのファンだでよー。中日球場に(客席)フェンスがなかった頃から見に行ってたんだでよー」

球場にフェンスがなかった時代ってファンと選手の距離も近く、応援にもチカラがこもったんでしょうね。その時代からずーっと母親はドララゴンズファンです。夜になると「今日は野球やらんのか?」と聞いてきます。残念ながら最近のテレビでは野球中継が少ないので「最近はなかなかやってくれんなぁ~」と答えると少し寂しそうです。なので放送があるときは食い入るように画面を見てテレビの前から動きません。

2022年9月現在、最下位のドラゴンズは9連戦9連勝すれば3位に浮上する可能性があり、クライマックスシリーズに参戦出来るというほぼほぼ難しい状況の初戦、その日は広島に4点取られて劣勢です。3回の攻撃を迎えた頃、負けていてもファンの母親の応援は熱がこもっていました。

「バッターボックスに立っとるんだで点が取れるはずなんだ!打てよー!」

そりゃそうですが・・・残念ながら3アウトチェンジ。そんな時必ず言います。

「あとひとり打てるバッターがいるといいんだわなぁ」

その「あとひとり」の根拠は判りませんが、ワタシは子供の頃から50年この言葉を聞き続けております。


終盤になりドラゴンズの守備です。中継ぎの祖父江投手がダッグアウトから出てきました。

「ええか、祖父江、教えたる、ストライク取れば勝てるでな!」

教えなくてもたぶん祖父江投手は知っているとは思います。


7回のウラ、ドラゴンズの攻撃で2点取れて広島4-2中日になりました。

「ヨシヨシ、あと2回あるで8回に1点9回に1点取れば勝てるでな」

・・・母上さま、それでは引き分けです。


テレビ中継が8時55分に終わって57分のニュースの中で「ドラゴンズTODAY」のコーナーが始まりました。

「あー、負けとるで見んでもいい」
「勝っとるかもしれんがな」
「ええ、ええ、負けとるで」

昭和20年からのファンですがあきらめの早い母親です。

では、ムリなく明るく介護しましょうね。

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