ストーブをつける晩秋 / お墓参りと紅葉
知らぬうちに初雪が観測されていた。
まだ雪虫しか見ていない。
冷え込んだある日の朝、暖房をつけたが全く暖まらない。おかしいな、と確認をしに行くと点けたはずのスイッチが消えている。もう一度点けてみるも、20分後には同じ状況に逆戻り。
これは困ったと業者さんに連絡をして、来てもらうことになった。結果はやはり、交換のための工事が必要とのことだった。そして工事日は、まさかの11月上旬。こんなにも混んでいるということは、我が家以外にも同じ状況となり『暖房なし生活』を余儀なくされたお家がたくさんあるということだ。もはや「仲間」と呼びたい。
工事が終わるまでの期間、この寒さを乗り越えるには何らかの暖房器具を購入しなければならない。しかしこの時期の急な出費は、勘弁していただきたいものだ。クリスマスや年末年始に備えて出費はできるだけ抑えておきたいところ。なんだか給湯器やガスコンロまで壊れてしまうのではないかという気もしてくる。
あーだこーだと悩んでいたところ、工事を依頼した業者の方が「○○日が1桁気温でかなり冷え込むようだから」と灯油ストーブを持ってきてくれた。その優しさに私の心は、部屋よりも早くポカポカになった。更に感動したのが、ストーブに灯油が入った状態だったことと、灯油が満タンに入ったタンクも持ってきてくれたことだ。
私たちにとっては、ちょっと早く来てしまったサンタクロースだった。
北海道では冬、暖房なしではとても生活できない。そのため災害時の防寒対策も必須だ。みな、電気を使用しないポータブルストーブなどの対策をしていると思うが、我が家はまだであった。これを機に、現在どのポータブルストーブを購入するか検討中だ。
停電が発生していない状況の場合は電気ストーブでもよいのだが、今回初めて灯油ストーブを使用してみてわかったのは、暖まり方が全く違うということ。灯油ストーブはとても暖かく、そのスピードも早い。我が家には電気ストーブは1つあるので、1階は借りた灯油ストーブ、2階はその電気ストーブで就寝前の寝室をあたためたり、デスクワーク時に使用している。
灯油ストーブの香りは、父方の祖父母の家を思い出す。この香りが苦手な方もきっと多いと思うが、私は懐かしい気持ちになる香りだ。テーブルには祖母が作ってくれたおいしい手料理がずらっと並び、ストーブの近くには今は亡き私の父もいる。そして話上手な祖母の話を聞きみんなで笑っている。そんな光景が浮かぶ。祖父は私が産まれる前に亡くなり、会うことはできなかったが、ずっと見守ってくれているのだと思う。
母方の祖父母の家は、薪ストーブの香りだった。そのストーブの上で煮物や汁物などの大きな鍋を置いて温めたり、スルメを焼いたりしてくれた。祖父は、私たちが朝起きたときに寒くないよう早い時は3時半すぎから薪をくべてくれていた。祖父母が亡くなり、薪ストーブの使用はやめた。火の管理や煙突の掃除など、大変なことも多いためだ。現在はその家には母だけが暮らしている。
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今年もお墓参りができて、気持ちが落ち着いた。
やはりどんなに忙しくても年に1度は行きたい。
父と祖父、母方の祖父母、義父。
それぞれのお墓は道内ではあるけれど、それぞれ遠く離れた場所にある。道中、車内から見える紅葉はとてもきれいで、赤・黄・緑が混ざり合う明るいトンネルを通っているようだった。窓を開けると肌寒い風が通り抜け「もうすぐ冬が来るよ」と言われたような気がした。運転席の窓から助手席の窓へと、風と共にカメムシが通りすぎたときには私は悲鳴を上げ、紅葉どころではなくなってしまった。
きれいなお花と、大好きだったお酒や果物やお菓子をお供えして、目を閉じ手を合わせる。『故人を想うと、あの世の故人の周りに花が降る』と聞いたことがあるけれど本当かな、などと思いながら。