リュートとの出会い
「シェイクスピアの時代に人気のあった楽器がリュートです。劇の中でも実際に弾かれていたのですよ。」
コンサートで初めてリュートを聴く、観る人も多いようです。シェイクスピアの時代というとイメージしやすいようです。私が高校生の頃、(ずいぶん昔の話ですみません)NHK教育TVで「シェイクスピア劇場」という番組がありました。ドラマではなく実際の劇場のセットで忠実に再現され、すべての演目が上映するスタイルでした。シェイクスピアの台本には、劇中で使われる音楽の挿入場所、曲名など詳しく書かれています。リュートやヴィオール、リコーダーなど古楽器が使われて、毎回、TVの前に正座し、食い入るよう鑑賞していました。これが、私の初めてのリュート体験でした。
その後、伊豆にあるギターの学校で音楽を学ぶことになります。自分の好みの曲は古い時代に偏っていて、本来リュートで弾かれているものがほとんどでした。21歳の時にリュートを入手しました。日本人の製作したものでした。といってもギターのテクニックでリュートを弾いていただけでした。
世界的リュート奏者 佐藤豊彦
ちょうど、その頃、世界的リュート奏者の佐藤豊彦氏の演奏を聴く機会がありました。最初は、沼津でバロックリュートによる全曲バッハを弾くプログラムのコンサートでした。バッハ生誕300年の年です。2度目は静岡市で「アムステルダム リトルコンソート」のアンサンブルの演奏会でした。休憩中、ロビーでお客さんに珈琲が振舞われた。気さくにも演奏者たちもそこで観客と一緒に珈琲を飲みだしました。リコーダーのワルター・ファン・ハウヴェさん、メゾソプラノのルシア・メーウセンさん、リコーダーとヴィオラ・ダ・ガンバのケース・ブッケさん、そしてリュートの佐藤豊彦さん。古楽の一流の奏者です。
この機会を逃さず、佐藤豊彦さんに思い切って声をかけました。
「リュートの魅力は何ですか」
「多様性です。こうしてほかの楽器とアンサンブルもできるし、歌の伴奏も楽しいですよ。ソロを弾くのも色々な種類のリュートがあるからね。」
「今、ギターを弾いているのですが、リュートを学びたいのですが」
「それなら、オランダに来たらいいですよ。」
佐藤氏の住所をいただきメールのない時代、手紙で何度かやりとして留学が決まりました。25歳の時です。とにかくリュートを基本から習ってみたいという思いでした。
“今から始めて、プロのような上手な演奏者になる”のは難しいだろうな。“
“リュートが一番好きな人になる、これならできそうだ。 “
『この人リュートが好きなのだろうな』
と思ってもらえるような演奏を今も心掛けています。
ギターを弾いている人がリュートで弾いてみたいと思う作曲家は、バッハ同時代にドイツで活躍したヴァイスではないしょうか。この度、演奏しているヴァイスの「ファンタジー」は前半が小節線のないプレリュード的な様式になっています。自由な雰囲気はとてもリュート的です。後半はフーガになっています。高音域のメロディが中央域に移り、さらに低音域で繰り返される感じはリュートならではです。ギターと比べ弦の本数が多いため低音を押さえる必要がなく左手が楽になるからです。
オランダのMartin de Witte さん製作の11コースバロックリュートを弾いています。表面板のドイツ松は200年前の材料です。古い家を解体した時に出てきた古材を再利用しています。
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櫻田亨のCD|おやすみリュート
リュートに興味を持ってくれる方が増えると嬉しいですね。