リュートの現代曲
田内栄作曲「紺青の空」 リュート櫻田亨
YouTube田内栄作曲「Tear drops」リュート櫻田亨
YouTube田内栄さん紹介今回、弾いているリュート曲は田内栄さんの作品です。作曲家としてCD『紀行幻想曲第一集~第三集」をリリースされています。表紙の絵も田内さんの作品です。画家でもあります。
また写真家でもあります。田内さんの作品です。
さらに探検家でもあり、未知なる音を探してインドネシアを主な拠点に各地を放浪したりしています。ニューギニアのダニ族、ボルネオのダヤウ族など、辺境の諸部族とコラボレーションし製作した音楽はユニークな試みとして評価されています。近年はキプロスでワークショップやコンサートも開催しています。
リュートは音楽の区分では、中世~ルネサンス~バロックの時代に演奏されていたヨーロッパの楽器です。私も普段はいわゆる「古楽」と言われるジャンルの音楽を演奏しています。今を生きる作曲家、しかも日本人の作品を弾く機会は自分にとっても新鮮な体験となり刺激になっています。
2020年6月28日(日)に「子守唄の夕べ・田内栄作品集」というコンサートと北越谷の「楽の蔵・古民家フレンチレストラン&ギャラリー」で開催予定でしたが延期となりました。そのコンサートの紹介文です。
子守唄の夕べ 君の奏でるリュート 幼子は夢の中
リュートは400年前にヨーロッパで人気のあった弦楽器です。イギリスのエリザベス女王は枕元でリュートを奏でさせ眠りについたそうです。音の小さなリュートにのせて歌うリュートソングがたくさん残されています。その極意は「ささやくように歌う事。」と言われています。母親が子供のために歌う子守唄をイメージすると良いでしょう。田内栄さんの歌とリュートによる「七つの子守唄」は今回が初演になります。移り変わる季節を背景に、子守唄版歳時記という趣向になっています。春夏秋冬の四季に「早春」「梅雨」「晩秋」を加えた「七季」の歌曲集です。美しく詩情あふれる7曲で1年を巡ります。自身もリュートを奏でる作曲者ならではのソロ曲、二重奏曲もあります。田内栄さんのファンタジーの世界を古民家の蔵を移築したギャラリーで堪能していただきます。(櫻田)
紺青の空
「紺青の空」は「七つの子守唄」の中に1曲です。本来はリュート伴奏で歌われる子守唄です。田内さん自身の手によるリュートソロ曲です。子守唄なので歌詞もあります。この世界観、詩情あふれる感じが気に入っています。田内さんは作詞家もありますね。
Seven Lullabies Ⅵ
紺青の空 田内栄 作詞・作曲
旅人は草枕 紺青の空仰ぐ
懐かしさ駆け巡る ふるさと遠く風が吹く
風が吹く つめたい風海を渡る真鶴
はぐれてはまた出会う 枯野超え帰らんと
行く秋に穂綿舞う
飛んでゆけ 飛んでゆけ 蒲の穂綿
君の奏でるリュート 去り行く秋の夜長
我が庵 偲ぶれば
幼子は夢の中 遠くから 遠くから
見守りつつ
雪が舞う 雪が舞う ふるさと遠く
Tear drops
この曲は私のお気に入りです。繰り返される低音に乗せメロディが少しづつ変化していく「グランド」と呼ばれるスタイルで作曲されています。メロディの持つ切なくメランコリーな感じがリュートに似合います。
今から20年前、地元、越谷のギャラリーでサロンコンサートでの出来事です。こじんまりとしたスペースでのイベントなので合間にリュートや音楽の解説のお話をしながら演奏を進めていました。
「何か質問ある方、いらっしゃいますか?」と私。
「はい、今弾いているその楽器はおいくらですか?」
これが田内栄さんとの出会いでした。その演奏会で弾いていた楽器はその後、譲ってあげて今も田内さん自身が弾いています。
田内さんとのお付き合いもずいぶん長いものとなりました。私の一番最初のリュート弟子の一人であります。ですから田内さんのリュート作品はたくさんあります。今後も音楽と絵・写真・詩など、コラボした形で発表していければと思っています。現代のアーティストと一緒に何かを創造していくことは、演奏者としての大きな喜びもあります。
延期にとなったコンサートも開催が決まれば、お知らせします。