見出し画像

スケートデビュー

スウェーデンで生活するようになって驚いたことはたくさんあるけれど、気候温暖な地で育った私には、雪や氷にまつわる北欧の冬の生活に驚かされると同時に感動もしてしまう。

私のスケートデビューは小学生の頃。学年は覚えていないけど、自宅からバスで40分かそこらで着く小さな遊園地にあったスケートリンクにて。夏はプールだった所にテントが張られ、冬はスケートリンクになっていた。何せ雪が降るのは数年に一度ぐらい、しかもほんのちょっとチラチラと降るぐらいの土地なので、スケートとは無縁。スケートリンクがあっても通い詰める訳でもないので、上達もしない。万年初心者。

そんな私がスウェーデンに来て、ウソだろ?と目を疑ったのが、凍り付いた湖でスケートを楽しむスウェーデン人の姿。「湖が凍る」というのでさえ信じられないのに、その上でスケートをするなんて・・・!そして、面白いのはスケートをしている人たちの横で、氷の上を散歩してる人たちもいる事。”室内”スケートリンクが、私の知っているスケートの全て。そこでは、スケートする場所と歩く場所は柵や壁で仕切られているのだ。それが、当たり前だけど湖上には無いのだ。この衝撃、わかってもらえるかなぁ。

この衝撃は直ぐに興味へと変わり、湖上を歩いてみた。ツルッと滑る。怖いけど、楽しい!そして、目の前を優雅に、楽しそうにスケートで滑る人たちを見て、私もやってみたい!とうずいてしまい、その結果中古でスケートを揃え、最初は本当に生まれたての小鹿から、毎年冬になると近所の湖に行ってはヨロヨロと滑り、それを地道に4年か5年か続けてきた。室内スケートリンクしか知らなかった頃、ヨロヨロとしか滑れなかったのは正直楽しくは無かった。けれど、湖上でのヨロヨロは、風を切って滑っている訳でもないのにとてつもなく気持ち良かったのだ。怖いから足元ばっかり見ているんだけど、ふと顔を上げると雪景色が目の前に広がり、その真っただ中に立っている自分、その環境があまりにも不思議で、私は何よりもそれを経験したくて、毎年懲りることなくヨロヨロと湖上を滑っていたのだ。しかし、人間の体ってやっぱり凄いね。4年か5年も続けているうちに、ヨロヨロがスイスイに昇格するんだから。かと言って、スピードを出して”颯爽と”滑るにはまだまだ程遠いし、ブレーキをかけることもできない。それでも、滑りながら景色を楽しむ余裕はある。だから毎年、冬の湖上スケートはヨロヨロの時と変わらず気持ちよく、不思議な感覚で楽しいのだ。

この楽しさを、是非子ども達と一緒に味わいたい、と思うのは自然なことだろう。子ども達の通う幼稚園とすぐ隣に、市が管理している屋外リンクがある。夏はサッカーゴールが置いてあるので、サッカーする子ども達や、ボール遊びをする子ども達を見かけるけど、そこに冬になると水を撒いてリンクを作ってくれるのだ。このリンクが完成すると、幼稚園の子ども達はスケート靴も持参して滑って遊ぶ。息子は4歳。そろそろ興味も持ち始めたので、スケートデビューに誘ってみた。我が家からそのリンクまでは歩いて5分もしない。自分のスケート靴を見て「やってみる」と嬉しそう。でも、いざリンクに着くと、自宅から持って来ていたミニカーを手に「ここで遊ぶ」と、リンク脇の雪の上をミニカーを走らせて遊んでる。

息子はいつもそうだ。初めての挑戦の時は、挑戦をしない。脇で人がやっているのを見ているか、違うことをするか。それがわかっていたので自由に遊ばせ、徐々に氷の上に立つ、歩くに誘い、スケート靴を渡してみた。息子はスケート靴を手にはめて、四つん這いの格好でノコノコとスケート靴を滑らせ始め、楽しい!と笑顔。それ見て私も笑った。氷の上が楽しい、スケート靴が滑って楽しい、それがわかったデビュー戦。

その日以来、スケートやりたい、と言い出さない息子。本当に楽しかったんだろうか・・・しかし、私たち親は、息子と一緒にスケート滑る日を心待ちにしている。その為には、息子には練習してもらわなければならない。幸い(?)ここのところマイナス10度以下の日が続いているので、この街で一番大きな湖の氷が、スケートができるほどの厚さになった。週末は天気もいいらしい。ということで、息子のスケートデビュー第2戦だ。果たしてスケート靴は手にはめるのか、はたまた足に履くのか。私はスケート後のフィーカ(コーヒータイム)用に、只今パウンドケーキを焼いている。どちらも楽しみだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?